レースに参加する機会が減った今だからこそ気づいたこと
コロナ禍をきっかけに、多くのマラソンレースが中止や延期を余儀なくされている。そんな中、軍記さんどのようにモチベーションを維持しているのだろうか。
「今はランナーとしてレベルアップしたいというスイッチが入って、インターバルなどのスピード練習に挑戦しています。単純に時間ができたというのがまずひとつ。
以前はレースに参加することをモチベーションにしていたのですが、今では成長すること、体の変化を味わうことがモチベーションに変わってきたのも大きいですね。
強度の高い練習の頻度は週一くらい。もっぱら仲間と一緒に追い込んでいます。そのせいか、不思議とキツいとは思わないんですよね。もしひとりでやっていたらわかりませんが、ツライことをやってるという感覚はありません。無心で走っている時間は、頭の中をクリアに整理できるいい機会にもなっていますし」。
以前はまず大会に申し込んで、「エントリーしたからにはやらなきゃ!」という感覚だったが、大会が少なくなったからこそ、純粋に走る時間を楽しんでいる。走るときに音楽を聴くこともなくなったそう。
そして、最近はトレイルランにもハマっているのだとか。街中でのランと比べて五感がフルに刺激され、平坦な舗装路ではなかなか鍛えにくい細かな筋肉や、持久力といった自身の弱点にも刺激が入るのがいいところ。肉体的には疲れるけれど、心が満たされるのがトレイルランなのだ。
「ほかに変化したことといえば、夜型の生活から健康的なライフサイクルに切り替わりましたね。併せて時間の使い方の感覚も変わりました。夜遅くまで作業を詰め込むことがなくなり、『今日はここからここまでキッチリやろう』みたいに、ランナーっぽいメンタリティになってきたように感じます。
一度リズムを乱してしまうと、全体の効率が落ちますし、そもそも体にも良くないじゃないですか。これは歳を取ったことによる変化なのかもしれませんけど(笑)」。
コロナ禍をきっかけにランニングの奥深さに目覚め、新たな楽しみ方の扉を開けた軍記さん。だからこそ、近い将来はフルマラソン3時間切り(サブスリー)を目指したいし、トレイルランでは100マイラー(160kmレース完走者)の称号を手に入れたいと語ってくれた。
レースへの参加をきっかけに、ランニングのそのまた向こうへ。いい歳の大人がマジになれる。それって最高に贅沢な経験なのかも!
RUNNER’S FILE 38 氏名:軍記ひろし 年齢:42歳(1978年生まれ) 仕事:フォトグラファー 走る頻度:月間走行距離200~250km 記録:3時間52分43秒(2019年、かすみがうらマラソン) |
連載「Running Up-Date」一覧へ「Running Up-Date」ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。
上に戻る 礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真