クラブやライブハウスで、アルコール片手に好きな音を全身に浴びる──。
そんな遊び方に愛おしさすら覚えるのは、今のご時世のせいか、年齢のせいか。
東京の夜のミュージックシーンにフォーカスしたという新作Gショックを見て、そんなことを思った。
アートワークを手掛けたのはYOSHIROTTEN(ヨシロットン)。音楽とビジュアルのクロスオーバーを体現し、海外でも高評価を獲得するDJ兼グラフィックアーティストだ。
そんな彼が、今回のGショックで表現したのは“雑居ビルのアンダーグラウンドなパーティ”だとか。ベースとなるのは、ブランドの原点ともいえる2シリーズである。
ひとつは、Gショック定番のスクエアデザインに先進機能を搭載した「5600」シリーズ。ファーストモデルの魂を受け継ぐシリーズだから、「Gショックといえばコレ!」という人も多いだろう。
ふたつめは、Gショック=デジタルという常識を覆した二針アナログ型の「AW-500」。Gショック誕生から6年後、レイヴシーン黎明期の1989年に登場したモデルだ。シンプルかつミニマルなデザインで、今も人気の品番である。
当時を知る者としては、この2型をベースにしている時点でグッとくる。
で、いったいどんな仕掛けがあるのか。ダイヤルを見てみると……
中央から放射線状に伸びるライン。その周辺に陰影を作るような細かなドットが独特な世界を表現する。これは、薄暗いクラブのフロアを飛び交うレーザーをイメージしたのだとか。ボディはそれぞれダークグレーとライトグレーの2色展開で、そこに挿したオレンジとグリーンがサイケでイカしている。
そして、仕掛けはケースにも。部屋を暗くしてみよう。
わお! 今回のコラボ作を示すタポグラフィが蛍光で浮かび上がるではないか!
暗くなることでタネあかしとは、ナイトライフというテーマにぴったり。コレクトしたくなる仕掛けも忘れないあたりは、さすがGショックである。
年齢とともに、そこにご時世的な事情も重なり、勝手にディスタンスしてしまっていた音楽との戯れ。そんなひと時の楽しさを思い出させてくれる、進化したGショック。こいつを手に、再び“あの時間”を動かし始めるのも悪くない。
というか、そもそも格好いいんだから、あれこれ考える必要もないのかもしれないけれど。
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