カルチャーを使ったWATARI TRIPLE「C」PROJECTとは?
JR仙台駅から30kmほど南下したところに位置する亘理町の沿岸部を拠点とする本プロジェクト。プロジェクト名にある3つのCは「カルチャー(Culture)」「耕す(Cultivate)」「挑戦(Challenge)」であり、この地から新しい才能、新しい文化を創出していくことを意味する。
拠点となる約30万㎡という広大なフィールドには防災センターを設置。防災インフラを土台に、サーフィンやスケートボードを含めたスポーツ、移動弱者を助けるモビリティなど人を支えるテクノロジー、高齢者の医療を支えるヘルスケア、音楽、アート、食という6分野のコンテンツを展開して、世界初の「防災カルチャー」作りを目指す。
——具体的なアイデアがあれば教えてください。湯川 一例は、世界を目指すプロサーファーに来てもらい地元の子供たちとサーフィンしてもらう、というもの。触れ合い自体が貴重な体験になり、海という自然に触れられる機会にもなります。何よりサーフィンのように自然と直に触れ合うスポーツは意外と少ない。
そしてサーフィンにハマったら、「明日の波はどうだろう?」とか、未来の波や気象のことをずっと考えますよね。そのようなポジティブな思考の仕方、気持ちの持ち方も体験を通して獲得してもらえるといいなと思っています。
島田 まずはサーフィンやスケートボードで、「あそこに行けば自分の仲間がいる」と思えるチームを作りたいんです。そのチームには世界を目指す若きサーファーに所属してもらい、子供たちにサーフィンを教えてもらう。
そうすれば子供たちにとっては“サーフィンを教えてくれるお兄ちゃん”となり、大人たちにとっては街から生まれたヒーローとなる。一過性のイベントでは生まれない文化が生まれていくと思うんです。
湯川 第一歩としてオーディション企画を始めました。サーファー、スケーター、ミュージシャン、アーティスト、カメラマン、クリエイター、クラフトマン、プロジェクトマネジャーという8つの分野で世界を目指す若い人を対象にしています。
今は応募を締め切り、選考段階にあるのですが、選ばれた人たちには亘理町へ移住してもらい、共同生活を送りながら技術を磨き、子供向けスクールなどに携わることで本プロジェクトに参加してもらいます。地域に根付き、応援されながら、世界へ羽ばたいていく才能を亘理町から輩出したいと考え、生まれた企画です。
島田 やはりゼロから自分たちで作っていくことが、とても大切なんです。ここはまだ更地で、サーフボードを置くプレハブの建物だったりを自作しているのですが、そうしたプロセスは関わった人同士のつながりの純度を高めてくれます。
タイトなつながりを地域で生み出せたときには、「防災」という言葉を使わずとも、困ったときに助け合えるチームになっていると思うんです。
——島田さんはサッカー経験者ですが、今回は日本におけるメジャースポーツが入っていません。島田 戦略的に1人で参加できる分野に絞りました。個人で参加でき、かつ参加するとチームというコミュニティに加われる。そうした個々人がつながることで生まれた結束力は防災の強さを生むと思います。
さらに今後は亘理町を起点に全国展開していこうとも考えています。各地にはカヌーの聖地があるだろうし、カヤックやフィッシングを楽しめる場所もある。各地域に見られる自然をフィールドとするアクティビティには多様性があり、自由に楽しむためにも1人で参加できることは重要なんです。
そして各地域が交流していければ、とても強い防災ネットワークができる。そのようにも考えています。
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取材後、サーフィン部門には村上舜プロの参加が決定した。今後、日本を代表するトッププロサーファーは宮城県亘理町へ移住。しっかりと根を下ろし、世界を目指す一方で、島田さんや湯川さんらと被災地ならではの「防災カルチャー」づくりに参加していくことになる。
PEDRO GOMES、熊野淳司、高橋賢勇、清水健吾、鈴木泰之、柏田テツヲ=写真 菊池陽之介、諸見里 司、来田拓也=スタイリング 小山内 隆、高橋 淳、大関祐詞=編集・文 加瀬友重、菅 明美=文