「Running Up-Date」とは……ランニング界隈で話題の集まりがある。
そこは単なる市民ランナーが主催するプライベートな練習会にもかかわらず、箱根駅伝で優勝テープを切ったスピードランナーや元実業団選手、ときには五輪レベルの現役マラソンランナーまでが顔を出すという。
しかも参加メンバーの中にはインフルエンサーも所属しているから、情報が断片的に伝わることで、「何コレ、めちゃくちゃ豪華じゃん」とアンテナ鋭いランナーの間でちょっとした話題になっているのだ。
面白いのは、練習会の名称にシリアスな雰囲気がまるでなく、参加する面々が小洒落たウェアに身を包んでいること。それによってハードな練習内とのギャップがこれまたナゾを呼び、興味を惹きつけている。
その名も「健ちゃん練」。主宰の“健ちゃん”こと松永健士さんは陸上経験のない一般人で、アパレル関係の企業で本部長職に就くビジネスマンランナーだ。
走れる自分を取り戻すために始めた練習会
「健ちゃん練を始める前は、しばらく走ることから距離を置いていたんです」と言う松永さん。
ランニングとの出合いは10年以上前にさかのぼる。東京マラソンがスタートした年に当時の職場の先輩に誘われて走り始め、しばらくはダラダラと走っていた。
そのうち、トライアスリートという“人種”に、経営者をはじめパワフルで活きいきとした大人が多いことに気がつき、憧れもあってトライアスロンに傾倒。そうなると、ランだけでなくスイム、バイクと3種目をこなさなければならない。
「ビジネスアスリート仲間で集まって、それなりに真剣に競技へと打ち込んでいました。ただ、不整脈の一種である発作性心房細動を患ってしまい、走るのがどうにもしんどくなってしまいました。
このことがきっかけで運動することを辞めてしまい、アルコールとタバコが手放せない自堕落な毎日を送るようになりました」。
そんな中、取引先のアパレルブランドから声を掛けられたことで転機が訪れた。そのブランドの社内ランニングチームを発足させるにあたり、トライアスリートとしての松永さんを知るそのチームからコーチ役を依頼されたのだ。
「お受けするのであれば、自分がそれなりに走れるようにならないとコーチングに責任が持てませんよね。そこで、もう一度しっかり汗をかいて走れる自分を取り戻すべく、トライアスリート時代の仲間に声を掛けました」。
かくして、ランナーとしては隠居状態だった松永さんがマジメに走り込むための練習会、すなわち“健ちゃん練”が立ち上がった。2年半ほど前のことだ。
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