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親子で波に乗りながら人生を切り開く術を学ぶ

2019年、WSL主催の「ビラボンスーパーキッズチャレンジ」グロメットクラスでビッグイベント初優勝。「ずっと欲しいと思ってたGショックが賞品だったから、とてもうれしかった」と喜びを語る。
仙太郎くんに将来の夢を聞くと、「CTサーファーになることです」とはっきり答えた。ワールドサーフリーグ(WSL)のチャンピオンシップツアー(CT)は世界最高峰のコンテストツアー。サーフィンのコンペティションシーンにおいては、CTの年間チャンピオンこそが世界一だ。
ツアーメンバーはわずか32名の狭き門。これまで日本人のサーファーでメンズのCTに入ったのは、カリフォルニアで生まれ育った五十嵐カノア以外にいない。
カリフォルニアでのひとコマ。ワールドツアー参戦を目指す仙太郎くんは幼くして海外で経験を積んでいる。今行きたい国は長いライトブレイクがあるメキシコ、南アフリカとのこと。
「現実的には波がある環境と英語が大事だと思っています。正直なところ、湘南だとあまり波が立たないので、どんどん海外に出てほしい」と話す正太さん。仙太郎くんは中学生ながら既に海外経験が豊富だ。
カリフォルニアやオーストラリアを旅したことがあり、夏休みや冬休みには、インドネシアのバリ島で行われる「サーフキャンプ」というサーフキッズを集めた長期合宿にひとりで参加している。
また普段から日本中の大会を転戦しているため、仙太郎くんは日本中、世界中に友達がいる。サーフィンの選手を終えても、人生は続く。気は早いが、サーフィンから得た経験や思想、そして仲間こそが生涯の財産になると正太さんは考える。
日本中の大会を転戦しているため同世代のサーフィン仲間がたくさんいる。この日サーフィンに出かけたのは南房総。波のいいところに行けば、必ずのように友達に会える。
「どんなスポーツでも選手生命は短い。でも、大好きなサーフィンに携わることができていれば大丈夫だと思っています。
サーフィンに対してネガティブなことはあるかと仙太郎に聞いたら、嫌なことでも嫌じゃないと言いました。試合に負けてへこんでも、さらに頑張る気持ちになるから嫌ではないと。それは本当にすごいことだと思う。
だから僕は仙太郎が世界で戦える選手になれるよう全力で協力する。そして、仙太郎がいつまでもサーフィンに関わって生活ができるように育てています。
僕は長年仕事一筋だったので、今思うとそれが馬鹿らしく感じるときもあります。彼にはサーフィン仲間同士で模索して、人生の抜け道を考えていってほしいですね」。
海の中で同じ景色を見ながら過ごす、親子のサーフセッションはかけがえのない時間。夏の波が小さなとき、仙太郎くんは母・康子さんや妹・胡晴ちゃんも誘って一緒にサーフィンを楽しむ。
好きであることは最上のモチベーション。サーフィンも人生もその考えを指針に進めば、どんな逆境に置かれても前向きに歩んでいける。家族はサーフィンを始めてからそんな価値観を共有するようになったと、正太さんはうれしそうに微笑んだ。
「サーフィンを始めてから親子関係は良くなりました。一緒に勉強している時間が長くあるからだと思います。親と子供でそういった関係はあまりないじゃないですか。
仙太郎はサーフィンはうまいし、ひとりで海外へ行ったりとすっかり頼もしい。本気で世界を目指すと言っているので、これからもサポートしてやりたいと思っています」。
 
PEDRO GOMES、熊野淳司、高橋賢勇、清水健吾、鈴木泰之、柏田テツヲ=写真 小山内 隆、高橋 淳、大関祐詞=編集・文 加瀬友重、菅 明美=文


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