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利益がいちばんの目標ではない

[上]天然由来の原料から生まれた染料。特殊な媒染剤により色のほとんどが生地に吸着し、染色後に流す水は透明に近い。 [左下]ミヤシタパーク内の店舗「イコーランド シブヤ」。服のほか、約2カ月ごとに変わるテーマに準じた食品、コスメ、雑貨などを多数キュレーションし販売する。 [右下]ウコンの搾りかすも染料に。
前述したようにイコーランドはまだ始まったばかりのブランド。立ち上げ1年足らずでコロナ禍に見舞われた。それでも立ち止まることなく、積極的にサステイナブルなチャレンジを続けている。
「ゆくゆくはスーツのオーダーメイドのように、買い手が直接イコーランドの素材を購入して、自分だけの服を作れるようにしたい。
オーダーメイドの服って、誰しも長く大事に着るじゃないですか。大量消費のルーティンから脱却するためには、そんなふうに考え方を変える必要があると思うんです。新たなD2C(※1)プラットフォーム構築のために、やるべきことは山積みです」(松井さん)
「タイの工場と協業して、古着を粉末にして再生糸を作ろうという計画も進めています。いっさい染色などせず、さまざまな繊維がミックスしたままの色合いの糸です」(坂田さん)
利益の一部を寄付している「サーフライダー・ファウンデーション」のビーチクリーン活動。
現在、利益の一部は2つの団体に寄付されている。海を守る活動を行う「サーフライダー・ファウンデーション」と、貧困地域で安全な水を確保する活動を行う「ザ・ウォーター・プロジェクト」だ。
利益を地球環境と社会に還元し、すべてが循環するドネーションプログラムを設計する。このプログラムもまた、イコーランドの目指すプラットフォーム構築のための重要なファクターだ。
イコーランドは今までのビジネスの尺度とは違う視点、違う価値観に依拠するブランドなのだろう。そもそも成り立ちが違う。服を作ってからサステイナブルな視点を得たんじゃない。サステイナブルな視点で服作りを始めているのだから。
「ファッションに限らずどんな事業でも利益の計上は不可欠です。でもどこかで“右肩上がりをし続ける昨対比利益”は不自然だと、ずっと思っていました。
だからイコーランドというプラットフォームにおいては、利益は最優先の目標じゃない。誰もが等しい立場でファッションを楽しめる場所ができれば大成功。こんなことを言ってしまっては、経営者失格かもしれませんが」(松井さん)
EQUALAND イコーランド
創業年:2018年
代表取締役:松井智則
本社所在地:東京・渋谷
店舗:イコーランド シブヤ
従業員数:6名
※数値は2021年5月時点。
Sustainable Keywords
・素材の余剰在庫を活用した服作り
・アパレル業界の課題を解決する“D2Cプラットフォーム”
・利益の一部を還元するドネーションプログラムの設計
※1 D2C
「ダイレクト・トゥ・コンシューマー」の略。製造者と消費者が直接取引を行うという意味の言葉で、しばしばマーケティング用語として扱われる。メーカーが直接消費者に販売するためのECサイトは、D2Cビジネスモデルの代表例といえる。
 
鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文


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