6. Akoaki アートと建築が融合し「場」をつくる
米・デトロイトを拠点とするスタジオ。主に、建築と都市デザインを手がける。廃虚都市として名高かったデトロイトに、文化を媒介とした公共空間をつくり出す。主な作品に、移動式DJブース「マザーシップ」など。写真は、廃止されたデトロイト市の芸術文化局の必要性を訴えるアート作品。
「デトロイトはスプロール化した車社会。空き家と住居が同じエリアにあったりします。そこで必要なのは離れてしまった人と人をつなぎ直すこと。彼らは住民たちのナラティブからファンク音楽やアフロフューチャリズムを結びつけてつくったモバイルのDJブースでパーティを始めました。都市に眠るカルチャーからともに未来をつくる好例です」(白井)
7. InHouse Records 刑務所からレコードレーベルが登場
イギリス南東部の刑務所で2017年から活動するレコードレーベルで、服役する囚人たちが作成した音楽を世に送り出すプロジェクト。InHouseRecordsの活動に携わった囚人たちは、ポジティブな行動が428%増加、再犯率は1%未満と劇的な変化が見られる。
「とくに暴力的な犯罪を犯して刑務所に収監された人たちは、自分自身を語る言葉や表現の手段をもっていないことが多い。その手段のひとつとして、音楽をつくり、披露し、販売する、そんな取り組みを代表のJudaさんから聞いたとき衝撃を受けました。実際、自分と社会を再接続する手段をもつことで、再犯率も大きく減少しているそうです」(白井)
8. オレンジホームケアクリニック ケアと社会との関わり方を問い直す
福井県初の複数医師による24時間365日体制の在宅医療専門クリニックとして設立。「あなたの『生きる』に寄り添う」をビジョンに掲げ、全国各地での講演会や国の検討会への参加も積極的に行う。また、医療的ケア児らの日中の活動拠点となる「オレンジキッズケアラボ」を関連法人で運営している。
「在宅医療を通して、健康や幸せを問い直す活動をしているクリニックです。医療的ケア児が新幹線を使って旅をするプログラムでは、手助けをするために公共交通機関の職員さんもどんどん必要なサポートに適応してくれる。当事者もその周囲も変えていく姿は『医療はまちづくり』という代表の紅谷先生の言葉を体現しています」(白井)
9. うなぎの寝床 土地に眠る文化を資源に変える
土地の歴史や文化をひもとき、地域資源の可能性を深掘りすることで、地域の潜在的な魅力を引き出し、流通させていく「地域文化商社」として活動する。九州・八女を拠点にオンラインショップや店舗を運営するほか、地域文化や住民らと交流できるツーリズムを企画。文化資源を地域経済とつなげ、持続させることを目指す。
「ものづくりの現場に深く入り込みながらも、外からの視点を持ち続け、現代における意味を問い直し続ける企業です。生産拠点を海外に移してしまった国や地域も多いなか、日本の地域にはものづくりの現場がいまもなんとか残り続けている。日本のこれからを考える上でも欠かせない視点だと思います」(白井)
10. FIL 地域の魅力を再定義するブランド
人口約4000人の熊本県・南小国を拠点とするブランド。地元のブランド材「小国杉」の加工を中心に、シンプルでスタイリッシュな商品を多く手がける。ストアには、ショップのほか、アロマオイルの抽出場や、木材の加工体験ができるスタジオなどが併設される。
「南小国でいう杉のように、現代では象徴的な地域資源があっても、切り売りするだけでは生計が立てられません。それを家具やフレグランスにして、海外でも通用するブランドを育てていく。ストアに併設されたファブラボでは子どもたちまでデジタルを活用したものづくりに取り組むことも。こうした実践こそが、次の文化をつくるのではと考えます」(白井)
フォーブス ジャパン編集部=構成
提供記事=Forbes JAPAN