みんなが同じ船に乗りサステイナブルな社会を目指す
セブン-イレブンで販売したカカオドリンク「シトラスカカオ」と「トロピカルカカオ」はもちろんスラウェシ島のカカオ豆を使ったものだが、実はダリケー独自の手法「フルーツ発酵」がほどこされている。
「フルーツ発酵とは、カカオ豆を発酵させるときにマンゴーやパッションフルーツなどの果物と一緒に発酵させることで、香料を使わずカカオ豆にフルーツの香りをまとわせる手法。セブン-イレブンのカカオドリンクも、香料を使っていないのにほんのりフルーツが香ります。
これももとは気候変動対策というか、雨が降らなくてカカオがだめになったときに農家の収入を守るリスクヘッジとして、カカオとカカオの木の間にほかの樹木を植えたほうがいいと僕らが提案したんです。
農家の人たちは『フルーツを作っても南国ではありきたりすぎて売れない』と言うので、じゃあダリケーが買い取るよ、と。それで去年からダリケーの製品ラインナップにドライフルーツを加えたり、フルーツの香りを利用したフルーツ発酵を始めたりしました」。
こんなふうにして、何か課題があれば解決策を考え、すぐに実行する。思いつきが思いつきを生み、新たな製品が誕生し、結果的に「三方良し」がどんどん強固になっていく。
起業から10年、先のことは考えずに突っ走ってきたという吉野さんだが、これまでやってきたことを振り返り、ようやく自分のミッションのようなものが見えてきたという。
「現状のチョコレート業界は、上流から順番にカカオ豆の生産者がいて、コレクター(収集人)がいて、倉庫業者がいて、商社がいて、チョコメーカーがいて、小売店がいて、それぞれが独立している状態。
みんな自分のひとつ隣の上流から安く仕入れ、隣の下流に高く売ってその差額を利益にしているんですね。それぞれが自分の利益を優先して少しでも安いものを選ぼうとするから、結局は価格が重要になって、コモディティ化してしまいます」。
そうすると、しわ寄せは最上流の生産者にきてしまうが、もし生産者が不作でコケてしまったら、カカオ豆の収集人は仕事ができないし、倉庫も不要だし、チョコメーカーだってチョコレートを作れなくなってしまう、と吉野さん。
「だからこそ、それぞれが独立して存在するのではなく、生産者や倉庫やチョコメーカーが同じ船に乗らなければなりません。そうすれば、サスティナブルな仕組みができるはずなんです。
これはチョコにかぎった話ではなく、さまざまな産業にいえることで、実現すれば世の中が変わるかもしれない。それが今、僕の目指す社会のあり方です」。
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