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三方にメリットがあるトリプル・ウィンを実現

さらに、ダリケーは2014年から年に数度、スラウェシ島への農園視察ツアーを実施している。
取り引きのある企業関係者向けと、一般向けの2種類があり、当初はチョコレートの閑散期である夏の期間にダリケーのファンを増やすのと、わずかでも利益の足しになればと始めたものだが、これもスラウェシ島に意外な変化をもたらした。
「島内のカカオ農園のある村は、かつては年間の外国人訪問数が数人の土地でした。そこに僕らが年に数度、何十人もツアー客を連れて行くようになったものだから、ホテルは建つし、現地の観光局もやる気をみせはじめて。
僕らと日頃から頻繁に連絡をとって『今年はいつ来る? それに合わせてこのイベントや祭りをやるね』なんて言ってくれています(笑)」。
スラウェシ島ツアーでの記念撮影。(写真提供:吉野慶一)
日本からのツアー客がスラウェシ島へ来るようになって、最も変わったのが農家だという。
「農家にとってカカオはあくまで換金作物で、安定的に収穫して出荷できればそれでいい。だから虫に食われないように農薬を使っていたんです。ダリケーと契約するようになってからはかなり使用を控えてくれていたけれど、それでもまったく使わないことはなかった。
でも、あるときのツアーで一行が帰国したあと、農家の人たちが僕のところへ来て『もう農薬は使わない』って言うんです。だってさあ吉野さん、一緒にごはんを食べて、収穫をして、あんなに喜んでくれる家族のような人たちに届けるカカオに農薬は使えないよ、と。
僕が農薬をいっさい使わなかったらカカオをさらに高い価格で買うといくら言っても農家には響かなかったのに、お金では変わらなかった農家が日本からのツアー客とのふれあいで変わった。今は農薬は使わず、カカオの実一つひとつに袋をかけて虫を防いでいます。当初はまったく予期しなかった変化だけれど、人を動かすのはお金ではなく心だと知れた。これがいちばんの収穫だったと思っています」。
吉野さんの現地の仲間たち。(写真提供:吉野慶一)
これぞまさに、生産者、加工者(販売者)、消費者の三方にメリットがあるトリプル・ウィン。吉野さんはそれをお題目に唱えることなく、「気づけばそうなっていた」という理想的なかたちで実現した。
この素晴らしい仕組みをさらに広げていくには、サプライチェーンの上流(生産者)だけでなく、下流(販売)ももっと厚くする必要がある。そのための手段のひとつが、コンビニチェーンにダリケーの商品を置くことだったのだ。


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