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カカオ豆600kgを自腹で購入!

発酵していないカカオ豆は良い風味がしない。だから風味を気にするメーカーには買ってもらえない。ならば、発酵させれば日本企業も買ってくれるかもしれないし、買取価格だって上がるかもしれない。よかれと思い農家の人たちに進言したが、いい反応は得られなかった。
「農家の人たちが取引きをしている現地の買取業者は、カカオの風味など関係のない量産品を作るメーカーに豆を卸しているから、カカオ豆が発酵していようがしてなかろうが、同じ価格でしか買ってくれないと言う。だから発酵なんて面倒なことやらないよ、と。
でも、そんな姿勢でいたら、いつまでも彼らの生活は変わらない。せっかく良い豆があるのだから発酵すればいいじゃないかとしつこく提案すると、『発酵させたらお前が買ってくれるのか?』と詰め寄られ、つい『じゃあ買うよ』と。僕は日本から来たバイヤーだと思われていたようなんです(笑)」。

発酵した豆なら自分が買うと宣言したものの、農家の人たちは発酵の方法を知らない。そこで、吉野さんがインターネットで検索し、見よう見まねで発酵を指導した。
「そしたら豆が本当にめっちゃ良い香りになって。農家の人たちも驚いていたけれど、いちばんびっくりしたのは僕かもしれない(笑)」。
そうこうしているうちに「カカオ豆を高く買ってくれる日本人がいる」と村中に広まり、最終的に吉野さんのもとに集まったのは600kgものカカオ豆。吉野さんはそれらすべてを現地相場の2割増しで買取り、日本へ送った。
「金額は、船賃も込みで50万円ほど。とにかく豆を買ってしまったので、日本に届いたらサンプルを商社や菓子メーカーに送り、興味をもってもらえたら現地の農家と繋げてあげればいいか、くらいの考えでいました。そのときは、まさか自分がチョコレート屋をはじめるとは思ってもいなかったですね」。


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