再びチャレンジャーへと戻れるように
ランニングという、ちょっとハードな趣味を得てからは、すっかりストレスとは無縁の日常生活を送っている。
「走るときはそれなりのスピードで走ります。1km5分を切るくらいのスピードで風を切って進んでいる1時間は、特に考えごともせず、無に使い時間なんです。その1時間で、体と心がだいぶ浄化されている気がします」。
ここ最近は子供が3人になったこともあり、ランニングとの付き合い方をアップデートして、父親としての立場に見合った優先順位へとシフトさせている。それでもウィークデイは基本的に、毎日10kmを走るのが日課だ。
「営業の仕事で地方都市に出張することが多いのですが、その先々では必ず走るようにしています。心がけているのは、お城や高台を目的にして走ること。
そして何百年か前にその土地の当主が住んでいた場所から街を眺めるんです。そこまで自分の足でたどり着くことによって、その土地のカタチがフィジカルで感じられるので、取引先さんとの話も弾みますよ。『鶴ヶ城で、白虎隊が……』みたいな」。
家庭環境の変化に加え、コロナ禍もあって、今はレースには参加しておらず、この先も特に決まった予定はない。
もし東京マラソンの出走権が当選したら、以前のように走り込んで体を仕上げていくかもしれないけど、その大変さもよく分かっているだけに、一旦は距離を置いている状態だ。
「それでも毎日10km走ってるのは、いつでも“そっち側”に戻れるベースは保っておきたいと思っているからなのかもしれません。だから、いずれまたトレーニングをしっかりと組み立てて、サブスリーに挑戦してみたいですね」。
ほかのスポーツと違って大人になってからも気軽に始めることができ、さらにはそこから真綿が水を吸うように上達できる。おまけに歳をとってからでも記録を伸ばせる。だからやめられないし、止まらない。
何かと先を見通しにくいこの時代、やればやっただけ成長を実感できるアクティビティって、フェアで貴重な存在だと思いません?
RUNNER’S FILE 32 氏名:澁谷文伸 年齢:43歳(1977年生まれ) 仕事:アパレルメーカー 企画、デザイン 走る頻度:週5日、1時間ほど 記録:3時間1分50秒(2014年、湘南国際マラソン) |
連載「Running Up-Date」一覧へ「Running Up-Date」ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。
上に戻る 礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真