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2021.04.02

デリカの人気が落ちない理由。SUV×ミニバンという唯一無二のカテゴリー

「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……

vol.20:「デリカスペースギア」
三菱、1994年〜

SUVが悪路を走るのは当たり前だけど、ワンボックスやミニバンはあまり見かけない。タイヤが少し埋まるほど軟らかな泥道や、岩がゴロゴロしているような道になると少し心許ないのだ。
人や荷物をたくさん載せられるワンボックスやミニバンはキャンプに持ってこいな車なのに……。
「デリカスペースギア」。新車時価格は約200万〜440万円。2007年1月の生産終了から10年以上経つが、今でも100万円以上のプライスタグを掲げている中古車がたくさんある。
そこで、SUV並みのタフな悪路走破性と、人も荷物も積める積載性を両立させたのが、三菱のデリカスペースギアだ。
それまでありそうでなかった一台で、現在は後継に当たるデリカD:5がその意思を引き継いでいる。
障害物を乗り越えていけるよう、最低地上高は約190mm確保された。デビュー時点でスライドドアは助手席側にしかなかったが、途中から運転席側にも備わるようになった。
デリカ一族の祖は、商用バンのデリカ。1982年に登場したデリカスターワゴンに4WD車が追加されると、一気に注目を集める。
さらに1986年に登場した2代目デリカスターワゴンは、当時のRV(レクリエーショナル・ビークル)ブームに乗ってさらに販売台数を伸ばした。
あまりにも人気が高く、1994年に3代目へとフルモデルチェンジする際に、デリカスターワゴンがそのまま継続販売されることになり、そのため、3代目にあたる新型はデリカスペースギアと名前を変えなければならなくなったほどだ。
5つの天窓を備えたクリスタルライトルーフ(写真)と、前席と2列目頭上にそれぞれ開閉可能な窓が備わるツインサンルーフの2種類のサンルーフが用意された。さらに天井高を上げたハイルーフもあった。
このデリカスペースギアも、2代目パジェロ(1991年登場)に搭載されていた世界初のスーパーセレクト4WDが採用された。
走行中でも2WD/4WDの切り替えができるだけでなく、砂地や雪道でも比較的高速で走れる4HLcと、低速でじっくり行ける4LLcが選べるのがこの4WDシステムの特徴で、悪路に強い唯一無二のミニバンという地位をさらに強固なものにした。
シフトレバーはハンドル脇のコラム式で、運転席と助手席の間にはトランスファーレバーが備わる(4WD車)のみのため、車内での移動がスムーズ。
4WDだけではない。
悪路を走っても大丈夫なように、モノコックボディにフレームをビルトインして強固にしている。この構造の考え方自体も、2代目パジェロと同じだ。
さらに、デリカスターワゴンは、商用バンの名残となるエンジンの上に運転席があるキャブオーバー型だったが、デリカスペースギアでは、小さいながらボンネット内にエンジンを搭載。
おかげでほかのミニバン同様、運転席の足元からボディ後端までフラットな床を獲得した。
シートアレンジは多彩。2列目シートは90度回転や、180度回転させることができた。
バリエーションも豊富で、エンジンはデビュー時点で3Lガソリンをはじめ4機種用意され、ボディサイズはノーマルとロングがあり、4列シートの10人乗りや、シンクにガスコンロ、ポータブルシャワー、収納式ベッドを備えたキャンピング仕様車もあった。
ルーフキャリアや各種アタッチメント、タープ、脚立など純正オプションも豊富に用意されていた。
SUV×ミニバンという唯一無二のカテゴリーを築きあげたデリカ一族。
その地位を不動のものとしたデリカスペースギアは、人や荷物をたっぷり積んで、ほかのミニバンがひるむような道に出くわしても躊躇なくアクセルを踏める。今でも我々の冒険心をかき立ててくれる一台なのだ。
「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……
“今”を手軽に楽しむのが中古。“昔”を慈しむのが旧車だとしたら、これらの車はちょうどその間。好景気に沸き、グローバル化もまだ先の1980〜’90年代、自動車メーカーは今よりもそれぞれの信念に邁進していた。その頃に作られた車は、今でも立派に使えて、しかも慈しみを覚える名車が数多くあるのだ。上に戻る
籠島康弘=文
※中古車平均価格は編集部調べ。


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