「Running Up-Date」とは……メンズファッションのカルチャー全般に精通し、往年のディテールを今の空気感に落とし込むことに長けるデザイナーの小林 学さん。
手掛けているスロウガン、オーベルジュの両ブランドは、ヴィンテージ好きをも唸らせる丁寧なクリエイションに定評がある。
一見するとアスレチックなアクティビティとは無縁のライフスタイルを送っているようで、実は走歴10年というランナーだ。
ファッションとアクティビティの距離感がちょうどいいものを選ぶ
もっとも、ご本人としても体育会系然とした空気感にはほとんど馴染めず、長らくランニングには手を出せてなかった、というのは
前編でお伝えした通り。
そんな小林さんが走ることに目覚めたのは、真夜中に都会の公園を突っ走るという行為そのものに、カウンターカルチャー的な面白さを感じたから。スタイリッシュな最新ウェアに身を包んで、スマートにランニングするのは性に合わない。
では“非アスレチック”で“ヴィンテージ好き”なミドルエイジランナーは、どんなウェアで走っているのだろう?
「ナイキACGのアノラックパーカは、ACGがローンチした1990年前後のアイテムです。コンディションの良い古着を見つけると、ついつい買い足してしまい、色違いで10着は所有しているかもしれません。いわゆるウインドブレーカーですね。
往年のアメリカンアイテムなのでサイズパターンが大きめですが、裏を返せばそれだけ動けるゆとりがあるということ。自分にはこのウェアの立ち位置がちょうどいい」。
ちなみにキャップもACG。これも化繊のスポーティなアイテムだと本気度が出てしまうため、メッシュすら使っていないコットンのボディが”ちょうどいい”のである。
「ボトムスもナイキですが、これだけは2021年に購入したばかりの最新コレクションです。伸縮性の高いフレックスシリーズのパンツで、スリムフィットではなくスタンダードフィットのもの。モモの部分にゆとりがあって、ひざ下はピタッとテーパードしているサルエル調のシルエットです。
このパンツに出合うまでは、ピタピタのボトムスをはいて、その上にショーツを重ねるというスタイルで走っていました。でも、ロングパンツがピタピタしすぎていると、走っているうちに膝の上下動につられてズリ上がり、足の毛が逆立ってしまうんですよね」。
ショーツ1枚ではまだ寒い時期特有の、不快な痒みを解消してくれる良きパンツに出合ったのだ。
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