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アナログゲームをオンラインでプレイ

プレイヤーの増加から、ジャンルの拡大まで。躍進を続けているように見えるアナログゲーム市場だが、やはり新型コロナのパンデミックによる打撃は大きかったという。
ゲームマーケットは、「2020春(東京)」と「2020大阪」の開催を断念。約1年ぶりの開催となった「2020秋(東京)」の参加者数は約1万3300人に減少した。
飲食をしながら長時間ゲームをプレイすることが前提のボードゲームカフェも、外出自粛に伴い売上が低迷。閉店を決めた店舗もあるようだ。
こうしたリアルな空間でボードゲームを楽しむことが難しくなった一方で、商品自体の需要はコロナ禍でも伸び続けている。その理由として酒井氏は、今までの市場の盛り上がりや巣篭もり需要の他に、ある要素を指摘する。アナログゲームをオンラインで楽しむというトレンドだ。
「ボードゲームの内容をデジタルゲーム化するということではありません。ボードゲーム自体をオンラインでプレイする動きがコロナ禍でさらに活発化したように感じます」
そのひとつとして、オンラインチャットツールZoomを利用した遊び方がある。3〜4人でZoomを開始し、そのうち1人が“ゲームマスター”となり手持ちのボードゲームを画面に映しながら操作。他の参加者は、それを見ながら自分の動きを“ゲームマスター”に指示するというものだ。
他のプレイヤーが出したヒントから答えを連想するボードゲーム「ジャスト・ワン」をZoomを使って楽しむ様子(写真提供:JELLY JELLY CAFE)
Zoom飲み会の流行とともに、オンライン宴会を盛り上げる方法として人気を集めたというこの遊び方。ボードゲームを画面に映すだけというシンプルな手順でプレイできることから、幅広い世代に広まったという。
「コントローラーによる複雑な操作も必要ないアナログゲームであれば、デジタル機器の扱いに慣れた世代以外も気軽に楽しむことができる。
普段ボードゲームにあまり馴染みのない人が『Zoomでボードゲームなんて楽しそう!』と参加することで、その楽しさに気づくきっかけにもなったようです」
また、ボードゲームをプレイする様子を動画で紹介するYouTuberの影響も大きい。ボードゲームを扱った企画は、コロナ禍以前から「〇〇やってみた」と題し、手軽に動画コンテンツになることからYouTuberの間では人気だったという。
おこもり生活によりYouTubeを含む動画の視聴機会が増え、ボードゲーム紹介動画がより多くの人の目に留まったことで「自分たちもやってみよう」と真似する人が増えたのではないかと酒井氏は考える。
「『QuizKnock』などの人気YouTuberが動画にすることで、子どもたちや若者世代がボードゲームを知る機会にもなっている。ボードゲームを楽しむ層の若年化にも貢献してくれているように思います」
 
こうしたオンライン化の流れは、今後のウィズコロナ/アフターコロナの時代にもボードゲーム市場の肝となると酒井氏は話す。
「SCRAPの『リアル脱出ゲーム』がZoom上で開催されるなど、リアルな体験型ゲームをオンライン化する動きはコロナ禍により定着しつつあると思います。
ボードゲームも、この流れに乗り遅れてはいけない。ZoomやLINEなどオンラインサービスとの親和性の高いボードゲームをいかに展開していくかが、今後大事な鍵となるのではないでしょうか」
アナログでありながら、時代に合わせ進化の歩みを止めないボードゲーム。コロナ禍を乗り越えた先で、次はどのように人々を楽しませてくれるのか。その変化にまだまだ目が離せない。
 
大竹初奈=文 松崎美和子=編集
記事提供=Forbes JAPAN


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