トレンドは「大喜利系」
こうしたイベントや体験型施設の功績は、日本のアナログゲーム人口を増やしただけではない。日本では珍しい海外のボードゲームや、ゲームクリエイターによるユニークな新作アナログゲームを楽しむ機会が増えたことで、より多くのジャンルや種類のアナログゲームが広く人々に知られるきっかけにもなったという。
そんな中、人々を魅了させるアナログゲームにも「トレンド」があると酒井氏は話す。特にここ数年間、人気が衰えず売上を伸ばし続けているジャンルが「大喜利系」だ。
大喜利系とは、お題が書かれたカードの中からプレイヤーが1枚選び、上手な答えを考え出す、つまり「大喜利」をするゲームだ。
人気のカードゲーム「ナンジャモンジャ」も大喜利系だ。カードに描かれた謎の生物に自分で「名前」をつけて、再び山札から同じカードが現れたら、その名前を誰よりも早く叫ぶという遊びだが、「どんな名前をつけるか」にプレイヤーの大喜利センスが問われるわけだ。
他にも、カードを引いて、書かれたキーワードから “あるシチュエーションを声と表情だけで表現する”や“相手を満足させるプロポーズを考える”などを大喜利する「はぁって言うゲーム」(幻冬舎)、「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」(ClaGla)などのゲームがこの分類に入る。
「大喜利は『笑点』や『IPPONグランプリ』など、テレビでもよく観られることから日本人にとって馴染みのあるエンタメです。それを、ボードゲームを通じて自分たちでやってみる。そんなお笑い擬似体験の要素が、人々の心をくすぐるコンテンツになっています」
自分の回答で一緒にゲームをプレイする人々に「ウケる」。こうした“笑いの成功体験”で盛り上がることができるのは大きな魅力だ。
近頃、人気が急上昇している最新トレンドもある。「ミステリー系ゲーム」だ。
ミステリー系ゲームとは、ゲーム開始時に提示されたとある“謎”が、プレイしていくうちに明かされていくというもので、「ゲーム終了時には、まるで推理小説を読み終わったような達成感がある」のだという。
ミステリー系ゲームのトレンドは、ボードゲームの本場として知られるドイツで誕生した。毎年20万人近い来場者を誇るボードゲームイベント「エッセン・シュピール(Internationale Spieltage SPIEL)」で数年前から注目されているそうだ。
日本におけるミステリー系ゲームは、世界と比べまだ浸透しきっておらず、その数も大喜利系ゲームと比較するとまだ少ない。しかし、その流行の兆しは既に見えはじめているという。
「ドイツで起きたトレンドは、数年経って日本にも上陸します。実際、去年あたりから前述のゲームマーケット内でミステリー系ゲームを出展するクリエイターが増えはじめています。
ミステリー系ゲームの一種で、ゲームのストーリー内で起きた殺人事件の犯人をプレイヤー同士が対話を通じて自分たちの中から見つけ出す『マーダーミステリー』もとても人気が高まっています」
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