最初に言っておくが、どんな寄付でも「する/しない」は個人の自由。そして誰からも強要されるべきものではない。
その前提での話として聞いてほしい。
もしあなたに寄付したいという気持ちが湧いてきたなら、そこから先を難しく考える必要はない。自分の利益(税の優遇といった物質的利益だけじゃなく、名誉や愛情もそうだ)を勘案したっていいし、他人に自慢してもいい。
それで確かに助かる人がいるのなら、やらないよりやったほうがずっといいのである。
さて、写真は2016年に登場したルイ・ヴィトンのアクセサリー「シルバー・ロックイット」。小さなシルバーのチャームにコードというミニマルな構成の、我々好みのブレスレットである。
ちなみに錠前型のチャームは、2代目当主ジョルジュ・ヴィトンが発明したタンブラー錠前からインスピレーションを得ているとか。シンプルなだけに、ほかのアクセサリーや腕時計との重ね着けも楽しめそう。
そんなふうにただ自分が欲しくなっただけのブレスレットを買うことが、誰かの支援につながるとしたら? 実はこのブレスレットの売り上げの一部は、ユニセフとのパートナーシップを通じて世界中の子供たちのために使われる。
水、衛生、栄養、教育、保健サービスをはじめ、新型コロナウイルス感染に対する緊急対策への支援まで。このブレスレット1つにつき100ドルがユニセフに寄付される。自分のために選んだアクセサリーが、世のため人のためになる。
あえて下世話に言えば、ルイ・ヴィトンを手に入れたうえに、誰かの助けになったという自己満足も得られるというわけだ。いや、そんなふうに卑下する必要もないか。
こういうことを実現してしまうのがファッションの底力だと、素直に感心すればいいのだ。
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 加瀬友重=文