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子供の夢そのもの

ツリーハウスと言われて思い描く姿を写し取ったようなこの家は、まさに子供の夢そのもの。アッカーマン夫妻の3人の子供たちは、あらゆる樹木が持つ3つの要素にちなみ、ザイレム(木部)、カカンビアム(形成層)、フロエム(師部)と名付けられ、木々の間に張られたネットで思いっきり遊んでいる。
映画『フック』のセットから飛び出してきたみたいな、ワイヤーロープのジップライン(※訳注 木々の間に張られたワイヤーロープを滑車で滑り降りる遊び)もある。ジップラインに吊されたゴンドラは、第2次世界大戦でアメリカ海軍が使っていた大鍋が敷地内に埋もれているのを見つけて再利用した。アーロンは、重さ220kgを超える出産用の石造りの浴槽もこれで家に運んだという。建築資材の75%は、廃品を拾ったり再利用したりしたものである。
 

アーロンは建築家およびサステイナビリティのファシリテーターとして、バウワース・アンド・クボタで15年にわたり働いている。彼の家のプロジェクトは、同社にとってこれまでで最も野心的なプロジェクトだった。
プロジェクト名は、ハワイの言葉を組み合わせた“ハレオライリアイナポノ”という。住居(ハレオラ)の管理を、コミュニティ(イリ アイナ)の改善を目指す人物が道徳的な方法(ポノ)で行うという、3つの概念を融合させた名前である。
彼の家の目的は、人々が考える環境に優しい建築物の水準を上げることである。
「どのように暮らすか。これには影響力があります。私たちは、平均して90%の時間を室内で過ごします」とアーロンは語る。「つまり、住んでいる建物によって、私たちは大きな影響を受けるのです」。
ハワイではこれまでにも、建築や都市の環境の環境性能を評価するLEED認証(※訳注 アメリカの非営利団体が開発・運営している認証制度)を取得した開発が行われていた。しかしアーロンは、LEEDより厳格で環境性能の高い建物を評価する「リビング・ビルディング・チャレンジ」建築基準に基づき、自宅を建設した。
国際リビングフューチャー協会が考案したリビング・ビルディング・チャレンジは、厳格な20の評価項目から成る。これらを満たした建物だけがリビング・ビルディングの認証を得られるのだ。
この評価項目は厳しく、例えば、建物で使うエネルギーはすべて再生可能な資源から創り出すこと、すべての水は雨水集水でまかなうこと、さらに廃水や豪雨による雨水は都市型農業または地下水涵養(かんよう)に再利用することが求められている。
つまり、この認証を勝ち取るためには、省エネルギーであるだけでは十分ではないということだ。差し引きでプラスの影響を与えることを目指しており、その土地から奪ったもの以上を返さねばならないのだ。
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創造力をフルに使って

アーロンは創造力をフルに使って、ハワイの建築物ならではの課題に立ち向かった。リビング・ビルディング・チャレンジで求められることのひとつに、使用する建材の大部分は地元の資源から得なければならない、というものがある。
ハワイ産の材料としては、溶岩石、コアやオヒアの木など、ほんの数種しか使えるものがないため、アーロンは、これらは使わずに保護するほうがよいと考えた。代わりに、オアフにあるシングルウォール工法の家屋を取り壊した際に、たくさんの廃材が出ることに着目をした。
こうして、シダーやレッドウッドなどの材料を手に入れた。それらは、ハワイの高い湿度、腐食性のある潮風、シロアリ被害、強い紫外線に耐えられることが実証済みだった。それだけではなく、アーロンは廃棄所に送られるはずだった材料を救ったのだ。

最先端の暮らし

アーロンの家は最新技術や最新機器を備えているが、彼のインスピレーション源は自然であり、自然とつながるハワイの文化だった。たとえば、水は貴重だ。ハワイの人々にとって大切な資源である。そこで、屋根に植えられたラウアエシダが、豪雨による雨水を吸水して家を涼しく保つ。トイレやキッチンのシンクから出る汚水は、好気性処理法を用いて処理し、洗濯石けんとして使える実のなるアエの木(ハワイのムクロジの木)など、食用ではない植物の地下潅漑に用いる。
生活排水は、排水に熱が残っている場合はこれを取り出して新たに水を加熱するために使ってから、床下で貯めておく。集水雨水は、飲み水やシャワー以外にも、敷地内に生息するライチ、マカデミアナッツ、コーヒー、マンゴーなどの25種類以上の果樹の潅漑用水など、幅広く使われる。
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