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ホテルに捧げた先代

世代を超えても変わらないものは他にもある。マナゴ家が、事業と客に献身的に取り組んでいることだ。たとえば、ドワイトの母ナンシーは朝4時半から週7日間働いていて、夜9時までホテルにいることもあった。ドワイトによると、1カ月間で最も遠出したのがホテル前の歩道だったときさえあったという。
いつも地元の人と観光客で賑わっているホテルにも、静かな場所はある。
「私たちは、献身的に取り組んできました」とドワイトは話す。「妻も身を捧げてくれましたし、従業員も本当に頑張ってくれました。そのおかげで、現在の私たちがあるのです。もう一度やり直せるとしたら、何か違うことをするでしょうか。いえ、ほぼ何も変えないでしょう。これまで取り組んできたことに、何も悔いはないからです」
タリンとブリトニーは、父親の中に祖父の姿を感じることが増えてきた。娘2人に経営を引き継いでからの仕事ぶりや接客の仕方が、祖父に似てきたのだという。「父は絶対に認めませんが、皆がそう感じているんですよ」とブリトニーは笑いながら話す。
日が暮れ始める。テレビがある部屋では中年の夫婦が手を取り合って『CBSウィークエンドニュース』を見ている。番組が終わると、ハワイの地元局「KHON2」にチャンネルを替えて、夕方のニュースを見始める。同じ頃、花柄のドレスとラウハラ帽子を身に着けた老女の手を引いて、女性がホテルに入る。
後ろから、アロハシャツを着た男性も付いてくる。3人は、1920年に撮影された写真を通り過ぎる。当時のホテルを背景に、作業着をまとったホノカア農場の労働者たちが写っている写真で、1人はクレーン・シンプレックス・モデル5の自動車に腰かけている。
ホテルの突き出し看板のネオンは、地元の人であれ、島の住民であれ、海を渡って来たであれ、分け隔てなく迎え入れてくれる。
そろそろ夕食の支度ができたようだ。ラウハラ帽子の老女たちがレストランに入ると、10席のうち9席に先客がいたので、最後の12人掛けの席に腰を下ろす。この席の中では一番乗りだったようだ。
レストラン客の多くは常連で、夜にサウスコナの町へと帰るときは、スタッフが名前で呼びかけてお礼を伝える。初めて来た人は、注文したおかずと茶碗に入ったご飯が来るまでの間、壁のメニューに目を走らせている。この中から、きっとすぐに次の常連客が生まれるだろう。
 
写真=ミッシェル・ミシナ 文=キャメロン・ミクルカ 翻訳=加藤今日子
This article is provided by “FLUX”. Click here for the original article.


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