OCEANS

SHARE

日ごとに募る「救いたい」という思い

「再訪するために必要なものが手に入っちゃって『神様、これは行けってこと!?』って感じて、マスクを持ってすぐにガーナへ行ったんですよ。そしたら『本当に持ってきた!』ってすごい喜んでくれて。
いろいろな話をしているうちに、スラムの人たちの暮らしを変えるために、ここにあるゴミを資源に変えられるリサイクル工場を作ろう、という話になったんです」。
しかし帰国後、彼らを救いたいという思いが募る一方で、「自分がそれをやるのか?」「そもそも実現できるのか?」と不安も膨らんだ。
知り合いに相談したら、「そういう支援活動は一回始めたら一生続けなくてはならなくなるものだ、その覚悟はあるか」とも言われた。

「これまでの自分は何もかも中途半端で飽きっぽかったのに、彼らのことは頭から離れなかった。その一方で、世の中はクリスマスシーズン。自分もクリスマスツリーのデザインの仕事があったんですよ。
たまたま、自分の作ったクリスマスツリーを12月25日の夜中に見に行ったんですけど、夜中の0時過ぎたら解体業者が現れて、あっという間にクリスマスツリーはゴミになっちゃって」。
そのとき、あのアグボクブロシーのゴミ山の風景が浮かんだ。
アトリエにはガーナから送られてきた画材(=ゴミ)も山のようにある。
「ガーナを救うとか言って、結局きれいごとじゃん、自分のやってることもその一端だったんだ、という事実を目の当たりにしたわけですよ」。
ガツンと頭を殴られたような思いで家に帰った長坂さんは、悶々とした時間を過ごした。
「何やってんだろう、俺、資本主義を否定するようなことを考えながら自分も資本主義のど真ん中みたいなことやってんじゃん……って。なんかでもね、すっごい落ち込んだそのとき、いちばん底に当たった音がしたんですよ。
それで俺、やっぱりガーナ救うって決めたんです」。
それから1週間後、自分の気持ちがまったく変わっていないことを確信した長坂さんは、SNSで自分の決意を宣言した。しかし、救うにも自分にはお金がない。できるのは絵を描くことだけ。
ならばこのアグボクブロシーのゴミを画材にして絵を描いてみよう。そうやって生まれたのが、ゴミと油絵具で描かれたあの作品群だった。


4/4

次の記事を読み込んでいます。