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2021.04.26

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初の民間有人宇宙船「Crew-1」の打ち上げ成功までの舞台裏

当記事は「JAXA」の提供記事です。元記事はこちら
初の民間有人宇宙船、Crew-1の打ち上げを支えた仕事
2020年11月16日(日本時間)、米SpaceX社が開発した新型有人宇宙船クルードラゴンの運用初号機(Crew-1)が、野口聡一宇宙飛行士ら4人を乗せて宇宙へ飛び立った。この一大ミッションを支えるチームとして結成された搭乗支援隊で、企画係として重要な役割を担った有人宇宙技術部門 宇宙飛行士運用グループに、打ち上げ成功までの舞台裏を聞いた。
 

民間ならではのスピード感に対応

クルードラゴンは、米SpaceX社が開発した有人宇宙船。2020年5月の有人試験飛行を経て、今回その運用初号機であるCrew-1が打ち上げに挑んだ。
これまで国の主導で行われた有人宇宙船の開発・運用を民間企業が主体となって進め、その運用を開始させたのは、世界で初めてのこと。地球低軌道での商業活動を広げ、誰もが宇宙を利用できる未来へと大きく歩を進める、エポックメイキングなできごとだ。
©JAXA/NASA 打ち上げ当日、滞在施設を出発する野口宇宙飛行士(右)たち。宇宙服のデザインもSpaceX社が手がけた。
打ち上げに携わったJAXAの関係者は約80名。うち約20名がアメリカ(フロリダ州とテキサス州)で、NASAと連携をとりながら任務にあたった。そのなかで、フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターで「企画係」として野口宇宙飛行士の搭乗支援を行ったのが、宇宙飛行士運用グループの西川岳克と冨永和江だ。
搭乗支援隊は、実施責任者の佐々木理事をトップに、打ち上げに関する情報連絡や危機管理をはじめ、クルーの安全確認や医学管理、広報や家族へのサポートなど、作業内容によって担当する係が分かれている。そのなかで4名からなる企画係の業務は、非常に多岐にわたる。
例えば、日米間の連絡体制や、打ち上げでトラブルが発生した場合の対応手順の検討、日本からアメリカへの渡航手配なども担当する。打ち上げに向けて、各係の準備状況を確認する会議も取り仕切り、万全の体制を整えた。渡米してからも、各係との連絡・調整、進捗状況の管理、NASAとの調整、野口宇宙飛行士の搭乗にかかわる情報の収集などさまざま。多方面に目を向けながら、同時にいくつもの業務をこなさなければならない仕事だ。
冨永は第1陣として11月5日に渡米した。過去8回、スペースシャトルの打ち上げに企画係として携わったが、当時とは違ってケネディ宇宙センター(NASA)のなかにJAXAの常設事務所はない。そのため、会議室のひとつを情報収集の拠点とし、まずは通信や連絡系統の環境を整えるところから始めたという。
NASAケネディ宇宙センターで情報連絡の拠点とした会議室。ソーシャルディスタンスを保つため、椅子にはひとつ置きに使用禁止のテープが貼られ、空席が設けられている。
その4日後に西川も合流し、現地での業務をスタートした。SpaceX社が主導する打ち上げでは、これまでとの違いを感じたと西川は話す。
「5月の有人試験機で、打ち上げから国際宇宙センター(ISS)へのドッキングまで一連の流れを確認したつもりでしたが、打ち上げ直前までスケジュールが確定しないことが多く、現地に入ってからもスケジュール変更が発生し、柔軟な対応が求められました」。
その理由のひとつは「SpaceX社の、民間ならではのスピード感」だと冨永。「そこが、着実さを優先する国主導のプロジェクトとは大きく違うところだと思います。SpaceX社は打ち上げ直前まで対応に追われていたと思いますが、それでも目標のために突き進んで、これだけのことを実現してしまうのは率直にすごいと感じました」と続けた。


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