三原康裕さんがこの春スタートさせる「イン・ストル(メンタル)」は、音楽用語で歌詞のない楽曲のこと。
すなわちメッセージ性やテーマのない、非コレクションレーベルとしての新たな服作りを象徴するライン名だ。
| デザイナー 三原康裕さん 日本を代表するブランド「ミハラヤスヒロ」のデザイナー。2005年からパリをはじめ、海外でコレクションを発表し続けている。趣味はサーフィン。 |
「50歳を目前にして肩の力の抜けたものを作りたくなったんです。職業柄、常に刺激を求めて世界中を飛び回っていると思われがちですが、個人的には半径50km圏内で生きていければそれに越したことはないのです。
毎朝7時に起きて24時に寝る。日曜日の朝には海へ波乗りに行く。できるだけそのルーティンを崩したくないんです。そもそもデザイナー歴よりもサーファー歴のほうが長いですから(笑)」。
そこで手に取ったのが、三原さんが自身のクリエイションで長年使い続けてきた、つまりは飽きのこなかった素材だ。
Tシャツのボディは度詰めした天竺で、肩のシームを省いたリラックスした着心地に仕上げている。ボトムスはSZコットン。右撚りの糸と左撚りの糸が合わさっており、斜行と呼ばれる洗濯後のヨレが生じにくい。
「洗いざらしで着てもそれなりにちゃんと見えるから、例えば子供に鼻水をつけられてもガンガン洗えます。部屋で寝転がるときはもちろん、読書、パソコン、スケボーもこれ一着で。
近所の散歩のために気張って着飾るのは自然じゃないし、でもジャージー上下じゃ気が利いていない。そこら辺にあるシャツとパンツを適当に着ただけでいい具合にサマになる、そのバランスは考えたつもりです」。
いい意味でシーズンレスの、気負いのないラクな服だ。
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