サメのため、仲間のためにできること
クーツのもうひとつのパラドックス的特徴は、敵を愛することだ。その一環として、彼はサメの保護に関する法整備に取り組んできた。
ピュー環境グループなどの環境保護団体と協力し、フカヒレ漁のせいで年間推定7500万匹のサメが殺処分されている問題と戦っているのだ。
その種の法律としては全米初となる、ハワイ州のサメ保護法案の草案作成を手伝ったほか、世界各地のサメ保護区の設立にも手を貸している。
広大な海域を保護区に設定することで、そこにいるサメを守り、近隣諸国のフカヒレ漁を禁じるのである。
クーツの説明によると、法律が整ったおかげで、サメの個体数は安定しつつある。そのため、現在の彼は義肢の開発に主眼を置けるようになった。
1個あたり1万5000ドル以上する補装具を、手足を切断した人にとって入手しやすく、しかも活動的なライフスタイルにも適したものにすべく、デザインの改善を目指している。
彼が携わっている財団で、サメに襲われて手足を失った人を支援する「フレンズ・オブ・べサニー」の取り組みと、3Dプリンティング技術とのコラボレーションによって、プラスチックと炭素繊維インクを使った義肢のパーツを印刷できるという。
「最近では、かなり安い値段で、義足を上から下まで丸ごとプリントすることだって可能だ。去年あたりから登場したばかりの技術だけど、これが手足を失くした人の未来を切り拓くと僕は思っている」。
人生が彼に教えたことがあるとするならば、それは、瞬間瞬間のはかない大切さだ。「よく思い出すことがあるんだ。フランスで、もう日が暮れかけている時間に、ダスティン・バルカとマクア・ロスマン(※訳注:ともにサーファー)を撮影したときのことだけど」とクーツは語る。
「雲がかかっていて、雨も降っていた。すると突然、ぱっと太陽が現れたんだ。一気に完璧なくらい美しい光景になって、ダスティンがめちゃくちゃいいバックサイドエアーを決めた。ほんの数秒で物事が一気に変わるんだ。すごいことだよ」。
クーツの作品はmikecoots.comで閲覧できる。フレンズ・オブ・ベサニーの活動の詳細や支援の方法については、friendsofbethany.comにアクセスを。
John Hook=写真 Lisa Yamada-son=文 上原裕美子=翻訳
This article is provided by “FLUX”. Click herefor the original article.