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2021.02.13

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サメに片脚を喰われたのは幸運。義足のサーフ写真家、マイク・クーツが歩む道

当記事は「FLUX」の提供記事です。元記事はこちら

マイク・クーツはハワイ・カウアイ島出身の義足のサーファーでありフォトグラファー。18歳でサメに襲われて右脚を失うもサーフフォトグラファーとして成功、かつ自分の右脚を奪ったサメを保護する活動家でもあり、世界中のサメとともにダイビングするという並外れた男である。
マイク・クーツは不思議な男だ。彼のような人物にはめったに出会わないだろう。
雷に2度打たれるとか、あるいはサメに噛みつかれる(1150万分の1)とか、それくらいレアな確率だ。しかも、なんと彼自身が、まさにその1150万分の1の確率に当たっている。1997年秋のことだ。
「真面目な話、あれは僕の人生で最高の出来事だった」と彼は言う。本気なのだ。こんな発言(脚を失った体験を幸運だったと思える人なんて、いるだろうか)は、マイク・クーツという男のパラドックスを物語る皮切りにすぎない。
カウアイ島に住むフォトグラファーの彼は、普通の人なら辛い表情をする場面でも、たくさんの笑顔を見せ、何度も笑い声を立てる。
若きボディボード選手として、プロを目指していた矢先に、その事故は起きた。だが、人生を一変させる出来事への怒りに呑まれてしまうのではなく、クーツは闇の中にも光を見る道を選んだ。失ったものにもチャンスを見つけ、そこに目的意識を持つのだ。
サメに襲われたのは確かにかなり悲惨な体験だったが――「脚を見たら、もう完全にちぎれていて、ホラー映画みたいに血が噴き出していたよ」――クーツが主に憶えているのは「鳥肌が立ったこと」だという。「ムカデを見て、とっさに気味が悪くなるときみたいな……。痛みはちっとも感じなかった。でも、すごい圧迫感があった」。
そのあとの記憶はぼんやりしている。リーシュコードを止血帯代わりにして脚を縛り、ピックアップトラックの荷台に乗せられて病院に搬送された。医師の手が彼の身体を受け止めた直後に、気を失った。


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