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必要なのは“設備のバリアフリー”ではなく“心のバリアフリー”

実はビアバーを始めて2年目の時点で、堀木さんは「環境整備」、特に飲食店のバリアフリー化について、ひとつの結論に達していた。
「自分で店をやってみた結果、個人の飲食店にバリアフリー仕様のトイレは必要ないな、と。もちろんあるに越したことはないし、自分の店のトイレはそうしますよ。ただ、一般論として、店の利益率や回転率を考えると、個人店がバリアフリー仕様のトイレを導入するのはハードルが高い。
それならば、近くのコンビニや公園のトイレを使ってもらえばいい。車椅子の人が来ても、店にトイレがないからといって『だめなんです』と断るのではなく、『車椅子用のトイレはないけど、5分移動した先の公園に車椅子用のトイレがあります』と言ってあげればいいじゃんって」。

「環境整備」といえばハード面の問題だと思われがちだが、本当に必要なのは“設備のバリアフリー”ではなく“心のバリアフリー”なんです、と堀木さんは言う。
「無理に設備投資をするのではなく、設備はないけれど来てくださいねという気持ちを持つ。そのためには車椅子用のトイレが街のどこにあるかを知っていなくちゃいけないんだけど、そういった情報ってまったく共有されていないんです。
ひとりでも多くの人が認識すれば、障害を持った人ももうちょっと暮らしやすい社会になるんじゃないかって」。
そこで飲食関係者を対象に、車椅子ユーザーの来店時対応の講座を開催するなど、“心のバリアフリー”を浸透させるための活動を始めた。
そして、ビアバーをオープンして4年目の夏、堀木さんに大きな転機が訪れた。


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