ではもう少し人気のバンコンについて見てみよう。
前述のとおり、バンコンのベースとなるのは貨物輸送や商用に使われる車だ。
・軽バン →スズキ・エブリイ、ホンダ・Nvanなど
・小型バン →トヨタ・タウンエースや日産・NV200など
・1t積みクラスのバン →トヨタ・ハイエースや日産・NV350など
車種が多岐にわたる分、価格もさまざまである。軽バンベースなら200万円台~、小型バンベースなら250万円~。1t積クラスでも300万円台~600万円あたりがおおよその予算感だ。
いずれにせよ、運転席後ろの「荷室」を「居室」になるように、ビルダーが改造を施している。
具体的には、
1. 生活用の電気をまかなうためのサブバッテリー
2. 居室専用の暖房設備・FFヒーター(エンジン停止中も暖房が使える)
3. 乗車中は椅子席、就寝時にはベッドになるシートなどを装着する
これらの装備のおかげで、エンジンをかけっぱなしにしなくても暖房(あるいは冷房)が使えたり、ゆったりと体を伸ばして寝られたりする。事実、キャンピングカーのベッドの寝心地は、シートをリクライニング状態に倒して仮眠するのとは雲泥の差である。
もちろん、荷物の積載性も計算されているし、座席数も確保されているので、荷物を積んだり家族を乗せたりという、普段使いに不自由はない。キャンピングカーを普段使いする、という発想は決して無理な考えではないことは、販売実績の数字が物語っている。
忙しい人こそ乗ってほしい
「キャンピングカーなんて買ったところで、長期休暇なんて取れないし……」。キャンピングカーショーの現場で、そんな声に出合うこともある。私はそんな人にこそ、購入をお勧めしたいと常々思っている。
考えてもみてほしい。通常、家族旅行をするとき、どんな手順を踏むだろうか?
家族のスケジュールを確認。
行き先を決めたら、宿を探して予約。
交通機関の予約やチケットの手配をする。
旅行の何日も前から計画して、手続きをせねばならない。
キャンピングカーなら「思い立ったら即出発」が可能だ。目的地だって思いつきで決めてもいい。旅先で気が変わっても、行き先を変更するのも、予定を切り上げて帰ってくるのも自由自在である。せっかくいつでも持ち出せる「1部屋」があるのだから、こまめに出かけたくなる。「こんな高い物買って、年に何回使うの?」は、大抵の場合、杞憂なのである。
キャンピングカーが売れていることを受け、受け入れ施設も増えている。日本には数え切れないほどの温泉があり、各地それぞれに食べ物のバリエーションも豊かだ。ほんの数時間足を延ばすだけで、見たことのない景色、食べたことのない食べ物に出合える。新幹線の止まらない土地に、隠れた魅力がある。それが日本という国だ。その魅力に気づいた人こそが、キャンピングカーを手に入れているのだ。
渡部 竜生:キャンピングカージャーナリスト
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