パタンナーとして年間2000着の服をつくる一方で、彼はデザイナーとしての夢を実現することも考えていた。いまでこそ性別関係なく着られる「ジェンダーレス」がファッションの1つのトレンドになっているが、大丸は学生の頃から、そのようなもっと自由な服がつくれないかと考えていた。 OVERCOATは、彼がパタンナーとして何万人もの体のサイズを測って、自身の身体に刻み込んだ何万というビッグデータから、「最適解」を編み出してつくった奇跡のブランドだ。どんな大男でも小柄な女性でも着こなせるようなデザイン。それを可能にしているのが、OVERCOATだ。 布を羽織った時、その中心がセンターバックネック(肩と肩を結んだ中心線)に揃っていれば、誰でも美しく纏うことができる。大丸はパタンナーとしてこのことをよく知っているからこそ、シンプルで美しい構造を保ったまま、着心地のいいコートをつくっている。 ブランドのコンセプトは、「Wearing New York (ニューヨークを着る)」。ニューヨークの街を歩いていると、至る所でオーニング(カフェやデリカテッセンの軒先に掛けられている天幕)を見かける。 時にはスペルミスがあったり、ド派手な色を使っていたりするが、マテリアルには雨風に強い布を使っている。これを使ってコートをつくれば、防寒性に優れた服が出来上がるのではないか。ニューヨークでの大丸の日常生活から、唯一無二のアイデアが生み出されたのだ。