持ち運びをテーマにした新領域へのチャレンジ
’62年に画期的なスキーラックを発売したスーリーは、以降、イノベーティブな製品を次々と開発する。スキー板を安全、確実に収納するスキーボックス。車のルーフではなくリアに取り付けるトウバーマウント型バイクキャリア。
そして2010年、スーリーは初めてキャリア以外の製品を発表する。それは車ではなく人が運ぶラゲージ──トロリーケースやバックパック──であった。それはウェランダー氏がCEOに就任した年に重なっている。
「今までにないジャンルに投資したい、と会社に提案しました。確かに挑戦でしたが、私は必ず成功すると確信していたんです」。
この考え方は、同時期に決めたブランドの新たなキャッチコピー「ブリング・ユア・ライフ」に集約される。直訳すれば「暮らしを持ち運ぼう」。キャリア製造の哲学に共通するプロダクトさえ見いだせば、新領域の光はおのずと差し込む。ではいったい、どのようにして意識改革を図ったのだろうか。
「重要なのは何を変えたかではなく“何を変えなかったか”だと思います。70年にわたる素晴らしい歴史と、高い製品開発能力。そしてその製品を世界中で売るというビジネスマインド。変える必要のない、強固なブランドのバックボーンは既に確立していたのです」。
そのうえで3つの方針を打ち出した。ひとつは先述した新領域への進出。次に洗練されたデザインの追求。そして消費者第一の精神の強化、である。ただし、とウェランダー氏は付け加える。
「製造業でいちばん大事なのは、高品質で安全なものを作ること。耐久・耐天候など25項目のテストと、製品別の専用テストを行います。例えばサイクルキャリアなら車に積載して衝突するなど、さまざまな状況を想定。自動車メーカーと共同開発した振動装置で、製品寿命テストも実施しています」。
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