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休肝日神話の崩壊!? 大切なのは日々の酒量


ちなみに、せっかく肝臓専門のドクターということで、ここはぜひお聞きしておきたいことがある。それは、“休肝日”の取り方だ。
“週2日は休肝日を設けよう”とよく言われるが、何となくそう覚えているだけで、根拠は知らない……気がする。とにかく週2日、酒を我慢すればOK? 健康的でいられるの?
「実は、休肝日については科学的に良し悪しの決着がついていないんです。休肝日で肝臓を休めると、次の日には肝臓が元気になるようなイメージを持っていませんか? でも、肝臓はそんなにすぐ機能が落ちる臓器ではなく、地道にずっと働いているんです。1日や2日お酒を抜いたところで、ほとんど影響はないんですよ」。
な、なんと。ノンアルコールビールを握りしめて耐え抜いてきた休肝日が無意味だったなんて……。
「いえ、無意味とまでは言いません(笑)。当然、毎日たくさん飲む人が休肝日を設けることで、一週間の酒量を減らせるのであれば体にとって良いことです。でも、休肝日を作ったからといって、その分、ほかの日に我慢した分を取り戻すかのように飲酒をしてしまうと、体や肝臓への負担は大きくなります」。

……なるほど。考えようによっては、休肝日を設けられない酒好きにとっては朗報だ。例え休肝日を設けなくても、適量であれば毎日酒を飲んでも問題ないということになる。
ただし、肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれており、ダメージを受けても自覚症状はない。酒好きは一般的な人間ドッグで行われる血液検査と超音波検査で定期的なチェックをしてほしいという。
そして、もし数値が悪ければ、休肝日を設けるよりも、一週間の飲酒量を見直すべきだというのが浅部先生の主張だ。
「お酒と付き合っていくうえで大切なのは、自分の適量を知り、どう飲酒量をコントロールするかです。いろんな酒の種類を飲む、いわゆるチャンポンをすると悪酔いするという人もいますが、それも結局は飲んだ量が自分でわからなくなってしまうから。お酒好きは一度冷静に、自分の適量を検証してみましょう」。
結論。「日本酒は悪酔いする」「チャンポンをすると悪酔いする」は都市伝説。悪酔いの多くは、酒の飲みすぎと水分不足が原因なのだ。
この先も長く、健康的に晩酌を楽しみたいと願う酒好きは、ぜひ浅部先生監修の『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社刊)を読んでみるといいだろう。
最後に浅部先生がポツリとひと言。
「お酒は酔うためではなく、味わうために飲みたいですね」。
もういい大人ですからね。
年末は酒量が増えることもあるだろう。でも、「昨夜は日本酒を飲んだから今日は体がキツイなぁ」などと非科学的な責任転嫁は禁物。全国の造り手たちに合わせる顔がないと心得よ。
 
「カラダのメンテナン酒」とは……
気持ちイイ酔いに身を委ねる。やはり酒は人生を豊かにしてくれる……なんて思いつつ、頭の片隅にいつもチラつく「健康」の2文字。心もカラダも潤す、正しい“メンテナン酒”論。上に戻る
七瀬あい=取材・文 


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