最新のボンドウォッチに熱い視線が注がれるワケ
今年の4月に公開を控えていたシリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、世界中を襲ったパンデミックにより公開が11月に延期。そしてつい先日には日本公開は来春に延期されることが決定した。
そんな中、一躍脚光を浴びているのが25作目のボンドウォッチとして登場するオメガの「007 エディション」である。
広田 近年では『007』といえばオメガと言えるほどそのイメージが定着しましたね。
安藤 ピアース・ブロスナンが主演する1987年公開作『007/ゴールデンアイ』からオメガが採用されていますが、正直に言うと、このあたりから映画と企業のタイアップ感が強くなってしまいました。それに、彼の華奢な印象にオメガの時計がピンとこなかったんです。
広田 確かに。でもそれが、ダニエル・クレイグが主演するようになってから、とてもしっくりきていますよね。
安藤 いかにも軍人が着けていそうなマッチョな雰囲気がとても馴染んでいる。そして、25作目のために開発されたモデル「シーマスター ダイバー300 コーアクシャル マスター クロノメーター 007 エディション」が本当に格好いい。
広田 確かにこの時計は格好いいです。かつて英国空軍が使っていたアローマークを採用している点やエイジングされたような佇まいも、いい意味で朴訥とした表情でしっかり重厚感もある。
安藤 ボンドウォッチとしての臨場感を増してきているのには、ダニエル・クレイグと一緒に開発しているからだと聞きます。ボンドにはどんな時計が相応しいのか、彼も真剣に考え意見を出し合っているそうです。
広田 通常なら映画と市販モデルは仕様が異なるのが通例ですが、今回の「007 エディション」は劇中そのままのモデルが市販化さている。従来モデルと明らかに違う点ですね。
確かにこれまでは市販化するときに、針に「007」と入れたり映画を意識しすぎたデザインなど、妙に記念品ぽくなっていた傾向がありましたね。
安藤 そう、購入したばかりの時は熱もあって盛り上がるんだけど、時間が経つと夢から冷めてしまうというか。でも、今回のモデルは本当に格好いいんです。ケースもチタン製だし、実用性も申し分ありませんね。
マーケティングされてしまったボンドウォッチにはある種の難しさがあったというか。そういう意味では、オメガは次のフェーズに来たという感じはありますね。
広田 とても素晴らしいボンドウォッチだと思いますね。
安藤 あとはこの時計にどんなスパイ機能が備わっているのか。公開が待ち遠しい!
次回もお楽しみに!
「時器放談」とは……
マスターピースとされる名作時計の数々。毎回、こだわりの1本を厳選し、そのスゴさを腕時計界の2人の論客、広田雅将と安藤夏樹が言いたい放題、言葉で分解する。
上に戻る 鳥居健次郎=写真 安部 毅=文