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コンプレックスの反動で気付いた、凡庸な自分が持つ最大の武器


「昔から秀でたものは持っていませんし、凡庸と言いますか、個性や特技が何もない、言うなれば無色透明。そんな自分が昔から本当に嫌で……。嫌だからこそ、少なくとも自分が興味を持ったことだけは、持ち続けていく執念深さみたいなものがあって。それがコンプレックスの反動による好奇心や偏愛だと思うんですけど。
例えば高校時代にファッションに興味を持ったら、自分で古着店マップを作って何度もショップ巡りをしたり、DJをやるわけもないのに、少しでもいい音楽に出合いたくてレコードを買い漁ったりして。これは無色透明の自分を自覚しているからこその行動なのだと思います」。
無色透明なものはいつか何色かに染まるのではと問うと、井浦は「若い頃ならこんな色に染まりたい、とか言っていたでしょうけど、今は一生染まらないとわかっていますから」と、苦笑交じりに続ける。
「あるとき、無色透明だからこそ、その時々で何色にも染まれるということに気付いたんです。特に、何かになりきるのが仕事である俳優とは相性がいいのかなと。新たな表現を常に模索できるし、今やっている役が自分の表現の中でいちばん新しいということを目指してやっていけるので。
もちろん、稀にいくつも自分の色を持っている天才がいますが、それは本当に稀。よく『自分は何ものでもない』と悩む人がいますが、僕を含めてほとんどの人は良くも悪くも無色透明かなと。でもそれって逆に考えれば何色にもなれるということですから、僕は無色透明でよかったと思っています」。


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