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その新規層を言い換えれば「テレワークながら族」である。
日経新聞記事「巣ごもりでラジオに注目」(6月22日)には、「在宅勤務など巣ごもりの時間が長くなる中、ラジオを聴く人が増えています。スマートフォンやパソコンでも聴けるインターネットサービス『radiko(ラジコ)』の月間利用者数は4月に約910万人と過去最高を記録しました」と書かれている。
自宅でPCに向かって、ワードやエクセルをパチパチやりながらラジオを聴く、30~40代の「テレワークながら族」には、聴き手を「情報主義」で牽引・啓蒙するような構成よりも、聴き心地のいい、緩やかなラジオが合うのではないかと思うのだ。
そう考えると、「テレワークながら族」が今後もラジオ需要の一定比率を支えていきそうな中、同層の需要にも、ナイツの「雑談ラジオ」は見事にハマっていくと考えるのである。

期待するのはナイツ塙宣之の毒気

以上、「雑談ラジオ」が拓く新しい可能性を考えてみたが、ラジオ・ファン、ナイツ・ファンとして『ナイツ ザ・ラジオショー』に追加注文できるならば、塙宣之の毒気をもう少しだけ強めてほしいとリクエストしたいのだ。
私が知る限り、塙宣之の毒気が最も効いたナイツの傑作漫才が披露されたのは、2011年のフジテレビ『THE MANZAI』である。ドラマ『ひとつ屋根の下』(1993年)をいじるネタで、その内容は以下の記事に詳しい。
──ボケの塙宣之さんが、「小雪って名前で出ていた女優さん、元アイドルの……」と、ヒロインを演じた酒井法子さんに触れようとした。酒井さんは覚せい剤所持・使用容疑で2009年に逮捕されており、相方の土屋伸之さんが名前を出すことを軽くたしなめたが、塙さんは、「生放送ですからね。ピー入れますけどね、のり『ピー』」と、大声で酒井さんの愛称「のりピー」を叫んでしまった(J-CASTニュース/2011年12月18日)
聴き心地のよい「雑談ラジオ」を聴きながら、テレワークがさくさく進むのもいいが、反面「テレワーク疲れ」も指摘される今日この頃である。「テレワークながら族」のPCを打つ手をいったん止めさせて、疲れやストレスをリセットさせる毒気、つまりは『ピー』のようなネタが増えれば、鬼に金棒になると思うのである。
 
スージー鈴木:評論家
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記事提供:東洋経済ONLINE


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