コロナ禍でも、力をつけることはできる
箱根駅伝でのシード権獲得のあと、榎木さんと学生たちがさあ来年に向けて始動だ! というちょうどその頃、新型コロナウイルス感染拡大が広がり、大学も活動自粛になった。
春にシーズンが始まっても次々に大会は中止となり、活動が制限される中、チームでは「大会がないなら土台づくりのチャンスだ!」と各自で練習を積み重ね、リモートで監督と練習内容や思いを共有してきたという。
「そうして6月に練習が再開され、学内で記録会を行ったときに、みんな自己ベストを更新したんです。『試合がなくても力はついている。しっかり戦えるから、いつ試合が再開されてもいいようにがんばろう!』と話しました。
みんなもモチベーションが上がったし、自信になったと思います。8月、9月にはそれまでの1.5倍の強度の練習をしましたが、故障も少なく、すごくいい状態です」。
1月の箱根駅伝直後に監督が掲げた目標は3位。その目標は今も変わらない。
最後に、自身の監督2年目について、少し早めに振り返ってもらった。
「そうですね、満足度は90%です。コロナ禍もあった中で、目指したことをやれていますから。就任当初は本当に不安でしたが、今は本当に楽しい充実した日々が送れています。それは、選手にも伝わっているんじゃないかな、と思っています」。
あとは、試合で結果を出すのみ、と榎木さん。ちょうどインタビューの数日前に、箱根駅伝の無観客開催が決まった。
沿道に応援がなくても、応援する人はたくさんいる。そんな見えない姿、聞こえない声援をどうか感じて、走る選手も走れない選手も、精一杯走り抜いてもらいたい。
プロフィール
榎木和貴(えのきかずたか)●1974年宮崎県生まれ。宮崎県立小林高校卒業後、中央大学へ入学。箱根駅伝にて4年連続区間賞を獲得する。3年時には箱根駅伝総合優勝も経験。1997年、旭化成に入社し陸上部に所属。2000年2月、別府大分毎日マラソン優勝。2004年、沖電気女子陸上部ランニングコーチに就任。2007年にはトヨタ紡織陸上競技部コーチに就任。2011年、トヨタ紡織陸上競技部監督に就任。2019年2月に創価大学駅伝部監督に就任し、翌2020年の第96回箱根駅伝にてチームを初のシード権獲得に導く。
「37.5歳の人生スナップ」もうすぐ人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。
上に戻る 川瀬佐千子=取材・文 中山文子=写真