さて、ちろさんのゴールデン街デビューは20歳の頃。新宿で友人と飲んでいて終電を逃した彼女は、かねてから興味があったこの飲み屋街に足を向ける。
「とはいえ前情報は何もないんですが、ふと目に留まったのがポップな外観の『裏面』。勇気を出して入店しました」。
マスターの応対はやさしく、他の店も紹介してくれた。さらに、ちろさんは「裏面」で働くことになる。
時を同じくして打ち込んでいたのが音楽イベントのプロデュース。よく使っていた会場は2017年にビルの取り壊しによって閉店した新宿JAMだった。
「高校生のときに通っていて、のちにそこで自分のイベントを企画するようになって、最終的にはスタッフになりました。いろんな人に会えて、いろんな勉強もさせてもらえた大切な場所です」。
最近の生活についても聞いてみた。
「中野新橋の『星屑と三日月』というバーによく遊びに行っています。バーテンダーのネギシマユちゃんがアイドル時代からかわいくてかっこよくて大好き人なんです」。
ハマっているラーメン店は八王子にある「TAMAZOU-86」。普通の塩ラーメンやチャーハンもすべて美味しいが、とくに生ハムの脂が出汁に溶ける「冷やし塩ラーメン」最高だそう。
好きな本についても教えてくれた。
「『厭な小説』は内容がスッキリしないし、なかの紙も少し煤汚れていて一枚が地味に厚い厭な感じ。『はこにわ虫』は読んでいて不思議な世界に連れていってくれる漫画です」。
ここで、トイレから出てきたマスターが「これ、ちろのじゃない?」。手には化粧品。実はちろさん、すっぴんで出勤したが、「取材なんだから多少はやりなよ」とママに言われてトイレでメイクをしていたのだ。
ところで、もしやその『東京 看板ネコめぐり』という本には……。
「はい、このお店も載っています」。
さて、そんな「4C’s Bar ROSSO」は今年で6周年。10月8日(木)〜10日(土)の3日間は猫たちも含めてアニバーサリー態勢となる。比較的混まない早めの時間帯がオススメかもしれません。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
【取材協力】4C’s Bar ROSSO住所:東京都新宿区歌舞伎町1-1-10 ゴールデン街G1通り 2F電話番号:03-5155-1424https://twitter.com/4csbar_rosso「看板娘という名の愉悦」Vol.121好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
上に戻る >
連載「看板娘という名の愉悦」をもっと読む
石原たきび=取材・文