ご近所さんに配る「日曜日のバラの花」とは
実は、エースホテル京都の本来のオープン予定は今年の4月であった。しかし新型コロナウイルスの影響によりオープンを延期。現在はプレオープンという状況が続いており、3つめのレストラン開業を含めたグランドオープンは未定である(9月現在)。
「当初は7割がインバウンドのゲスト、3割が日本人のゲストという想定でした。ですがコロナの影響で、その7割が丸ごとなくなってしまったんです」。
そのインパクトはとても大きかったし、当然ながら現在も経営に影響しているという。しかしブラック氏は「悪いことばかりではなかった」と振り返る。
「地元の方々や商店とコミュニケーションをとる時間をつくれたというのが、大きかったと思います。オープン直後のホテルというのは日々の仕事をこなすのに精一杯。でも幸か不幸か、コロナによっていち早く“地域とのつながり”の土台を作ることができたんです」。
人数が多く集まるようなイベントは開催できない。では具体的に何をしたのか。開業前から現在まで、毎週日曜日、ご近所さんに直接バラの花を届けているのだ。「こんなホテルができましたのでよろしくお願いします」と。本当に地道に、少しずつ、リアルなつながりを広げていったのだ。
「物事には必ずネガティブな面とポジティブな面があります。新型コロナウイルスも同じ。でもホテルマンにとっていちばん大事なことを改めて教えてくれたという点では、大いに感謝すべきなのかもしれません」。
鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文