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2方向に“モディファイ”されたポルトフィーノ


新型コロナによる一時的なファクトリー閉鎖後、最初に発表されるフェラーリ。車名に入った「M」はモディファイの意味で、同社ではパフォーマンスを押し上げる進化を遂げたモデル(F512M、575Mマラネロなど)に使われてきた記号だ。
Mたる由縁は、まず従来のポルトフィーノに対して最高出力が20ps引き上げられて620psとなったこと、7速デュアルクラッチから小型で高効率な8速デュアルクラッチトランスミッションへと進化したこと。
さらにドライビングモード「マネッティーノ」が従来の「ウェット」「コンフォート」「スポーツ」「ESC(横すべり防止機能)オフ」の4モードに加え「レース」モードが追加されたこと。

ドライビングプレジャーを最大限に引き出すことに重点が置かれたこのレースモードでは、ドライバーのステアリングとアクセル操作をより直感的にしてくれる。そのために最新機能がエンジンや四輪を微細にコントロールし、アクセルやステアリングやアクセルによるドライバーの指示をタイムラグなく、瞬時に伝えてくれる。
0-100km/hは3.45秒、最高速度は320km/h。ルーフに跳ね馬がいることに気づいていない人は、晴れた日には屋根を開けて子どもを乗せているオープンカーが、まさかスーパーカー級に速いとは気づかないだろう。

一方で「M」へと進化したことに伴い、衝突被害軽減ブレーキを含む先進運転支援システムや、ベンチレーション&ヒーター機能のあるシート、スマホ連動モニターなど、平穏な日常を送るための最新機能も用意されている。
これなら妻に子供の送り迎えをお願いしても、喜ばれこそすれ、不満を言われることはないはずだ。
 
しかし絵画も彫刻も音楽も、有史以来世界をリードしてきたといっていいイタリア。しかも芸術品のような車を生み出すフェラーリゆえ、スタイルだけでなく、“フェラーリサウンド”と呼ばれるエンジン音は「ポルトフィーノM」にも引き継がれている。
1人車を走らせ、屋根を開け、日ごとに高くなる秋の空の青さと、暖かい陽射しと、涼しくなっていく空気を感じながら「ポルトフィーノM」のために調律されたフェラーリサウンドを楽しむひととき。フェラーリを所有したくなるこれ以上の意味は、あるだろうか。
 
籠島康弘=文


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