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「曖昧な目標」でマネジメントができないのはなぜか

社会全体で見てみれば、曖昧な目標の中で柔軟に創造的に動いていくほうがよい仕事がどんどん増えているように思えます。だから目標管理を止める会社も出てきているのでしょう。それなのに、なぜ今も多くの人が目標に明確性を求めるのでしょうか。
私が思うその理由のひとつは上司の皆さんが、曖昧な目標の中だと部下に自信を持って評価できないからです。実効性や正当性は別として、明確な目標を置いて、その達成度で評価を行うのは比較的簡単です。
一方、曖昧な方向性だけを上司と部下で握っておいて、事後的に「頑張ったな」「もう少しだな」と評価しても納得してもらえる前提は、上司と部下の間の信頼関係です。そこに自信がないために、明確な目標を作ろうとする心理が働くのです。
 

「あなたがそう言うなら仕方がない」と言ってもらえる上司に

もし、上司が部下の現状、つまりその性格や能力、キャリアの志向、今背負っている仕事の重さ、感じているストレス、具体的に日々やっている努力、などなどについてきちんと把握しているならば、曖昧な目標や方向性の中での評価であっても、「ここまで自分を知ってくれているあなたがそう言うならその評価は納得せざるを得ない」と思うのではないでしょうか。
実際、明確で具体的な目標を立てずとも、抽象的な評価の観点のみを握っておいても事後評価に問題が起こっていない会社はいくらでもあります。そしてそこには上司部下の間の信頼関係が必ず存在しているのです。
明確な目標を示せば、評価の際に「グウの音」も出ない状態は作れます。しかし「グウの音」も出ないことと「納得している」ことはまったく別です。目指すべきは、もちろん後者です。そうであれば、必ずしも目標は明確化する必要はなく、その代わりに、日々の仕事を通じて信頼関係を磨いていくことこそが本質なのではないでしょうか。
 
連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ
「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
石井あかね=イラスト


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