ビームスで“日本博”を開催してみたい
「このバッグを見てください。本格的な刺し子生地で、ストラップは本物の黒帯。愛知県豊川市の柔道着メーカー、タネイさんに作ってもらいました。武道は日本の重要な文化のひとつですからね」。
商品について思い入れたっぷりに語る鈴木氏。青森のボッコ靴。輪島塗の名刺入れ。瀬戸物の招き猫。見た目もうんちくも楽しい。
「ただ格好いい、かわいいだけではなくて、歴史と文化を感じさせる商品にしたい。そのうえでビームスらしい遊び心も加えたい。そんな部分にこだわっています」。
話し出したら本当に終わらないんですよ、と言って鈴木氏は笑う。メジャーなキャラクターや工芸品から、ごく一部で知られる特産品まで。そんな“ネタ”をどのように見つけ出すのだろうか。
「地方出張したときに、偶然面白いモノと出合ったりしますね。あるいは信頼している人からの口コミだったり。ウェブで調べることはまずなくて“足で稼ぐ”イメージ(笑)。だからほかとあまり被らないネタになるのかもしれません」。
足で企画の芽を探し、直感で成長株を見極め、豊かな経験により結実させる。時間はかかるが、商品はそのぶん骨太になるのだ。
「大都市にただモノを集めるだけの“便利な商売”はしたくないんです。最終的にはお客様に、その商品が作られた土地を訪れていただきたい。日本の地方には美味しい食べ物、美味しいお酒もたくさんありますから、ぜひ旅して楽しんでほしいんです」。
「ほかのレーベルとは規模が違いますが」との注釈つきではあるが、ウィズコロナの時代にもビームス ジャパンの売り上げは伸びている。それは4年間続けた「モノを売るだけではない、コトを意識した商売」が、消費者の心を強く捉えたからではないだろうか。この哲学を大切に踏襲し、今後はさらなるチャレンジを進める予定だ。
「ここ20年で各都道府県はもちろん、日本の主要都市のほとんどに足を運びましたので、次は島を攻めていきたい。さらに深い文化に出合えると期待しています。また京都店のように、地域に根ざしたお店も少しずつ増やしたいですね。
そして将来、大阪万博のような“日本の博覧会”をビームスで開催したいんです。実現できたら、相当楽しいと思いませんか?」。
鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文