「ラジオ体操2.0」とは……腰痛改善に効果的と、すすめられるがまま体幹トレーニングをやってみたものの、症状は一向に収まらないどころか、ますます悪化してきた……。
そんな無駄な努力を排除してくれる高効率な体幹トレーニングがラジオ体操に隠されていた!
【教えてくれる人】新田幸一さん高地トレーニングを街中で体験できるスタジオ「ハイアルチ」の開発者であり、プロデューサー。長年のトップアスリートたちへの指導経験を活かし、高地トレーニングの効果を最大限に引き上げるメニューを構築。現在は、浦和レッズの槙野智章選手をはじめとしたトップアスリートのほか、大学駅伝の選手たちのトレーナーも務めている。
体幹トレーニングには副作用が伴う!?
-よく「腰痛に効くから」といって腹筋などの運動指導をされるんですけど、症状が消えてしばらくするとまた痛みが出て、みたいなことを繰り返しがちですよね。新田:腰痛持ちの人のリハビリとしては、腹筋など、体幹部、いわゆるお腹や背中まわりにある筋肉を鍛えるエクササイズをすすめられることが多いですよね。
これは、体幹部にある筋肉をコルセットがわりにして、体の動きを安定させて腰への負担を減らすという狙いがあるんです。でも、常にコルセットが体のまわりを取り囲んでいることを想像してみてください。体、動かしづらいですよね。
-ああ、確かに。新田:体幹トレーニングは体の動きを安定させるうえでは効果的です。だから否定はしません。でも、筋肉や関節が硬くなることで可動域が小さくなってしまい、体が動かしづらくなるという副作用が伴うんです。
-体幹トレーニングといえば、腹筋や背筋、プランクのようなエクササイズを思い浮かべますが、これらも副作用が伴うと……?新田:そうですね。そればかりを行うと硬くなります。そこでラジオ体操なんですよ。具体的には全身を大きく動かして、全身の筋肉と関節を伸ばしながら行うエクササイズ。「体を斜め下に曲げ胸を反らす運動」と「体を回す運動」がそれです。
-なるほど。新田:今回は上半身全体を重りがわりに遠心性負荷を利用するのがポイントです。上半身全体の重さは相当なものなので、遠心力もより強くなります。そのため、上半身を屈伸させたり、振り子のようにぐるりと回すと、体幹に大きな負荷がかかります。
さらに遠心力によって体幹部の筋肉も一気に伸ばせる。だから僕個人としては、腹筋やプランクよりも、遠心力を使ったダイナミックな動きが伴ったエクササイズのほうが、腰痛予防には効果的かつ効率的だと思ってます。
-もう少し詳しく教えてください。新田:「体を斜め下に曲げ胸を反らす運動」と「体を回す運動」の優れたところは、体全体に遠心性負荷を与えられるという点です。一方、腹筋やプランクのような運動は求心性負荷(筋肉を収縮させるときに発生する負荷)をかけられるエクササイズ。
例えば、ダンベルを持って肘を曲げると、上腕の筋肉がギュっと縮んで力こぶができますよね? このとき、筋肉には求心性負荷がかかっているんです。遠心性負荷はその逆。ダンベルを持って曲げた肘を伸ばすときや、腹筋で上体を戻すときに発生する負荷のことです。
-仕組みはわかったのですが、遠心性負荷が体を硬くしないことにつながるのはなぜですか?新田:体幹の筋肉を伸ばしながら負荷をかけていけるからです。筋肉というのは自力で縮むことはできますが、伸びることはできません。だから、外から力を加えて伸ばしていかないと筋肉は縮む一方になってしまうのです。
つまり、筋肉を縮める求心性負荷ばかりかけていくと、筋肉はどんどん縮んで硬くなって体をガチガチにしてしまう。そこで、肉や関節を伸ばしながら体幹部の筋肉にも刺激を与えられる遠心性負荷のエクササイズで、体が硬くならないようにバランスをとってあげるんですよ。
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