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利便を上まわるルックスに惚れぼれ

ブランド不明の薪ばさみ
ブランド不明の薪ばさみ。
「アウトドアでは料理を作ったり、さまざまなギアを試してみたりと、楽しめる要素はいろいろあります。でも、結局僕の場合、メインディッシュは焚き火っていう……(笑)」。
村田さんは、どこかで大好きな焚き火に合わせギアを選んでいる節があるという。代表的なギアが薪ばさみだ。
「薪をくべたり取り除いたり、空気の通り道を作って火の加減を調節したり。焚き火しているとき、薪ばさみは常に握っていますね。これまでは量販店で安く買えるステンレス製のトングを使っていたんですけど、これだけ長時間使用するのであれば、簡易的なものよりはどっしりとした男らしいものが欲しいな、と思ったんです」。

ウッドと漆黒の鉄のコントラストがなんとも美しいこちらは、「自然の景観に溶け込むルックス」という村田さん独自のセレクト基準で選んだ。手元で折れ曲がりながら先端へと伸びたフォルムには、武骨ななかにも洗練が感じられる。薪を掴みやすいようハサミの先端が平らになっているのもうれしい配慮である。
「こいつを使い始めてから、余計に薪ばさみを手放せなくなりましたよね。必要だからというのもありますが、やはり思い入れの強さがいちばんです。慣れないと使いづらい部分はありますけどね」。
その愛情の深さは、色が変化してきたウッドの持ち手にもよく表れている。
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やっと出会えた運命のギア、キューピッドは……

ピコグリルの398
ピコグリルの398。
村田さんがギアを選ぶ基準として、真っ先に挙げたのが「軽さと耐久性」。こよなく愛する焚き火のメインキャストである焚き火台は、出逢いと別れの繰り返しだったという。

「キャンプギアを揃え始めた当初は、ほとんどの場合そこまで迷うことはなかったんです。ただ、焚き火台は別。これまでいろいろ試しながら、何度も買い換えてきました。大抵のものは使えなくもなかったのですが、どうもピンとこなかったんですよね……。そこで、芸人のヒロシさんの動画で見たこいつを試すことにしました」。
ピコグリルは、’83年にスイスで設立されたSTC社が展開するブランド。その焚き火台は、薄い、軽い、美しいと三拍子揃い。村田さんに「無敵」とまで言わしめる実力だ。
重さは約450gと、ペットボトル飲料以下。パーツを分解すればすべて平らに折り畳めるため持ち運びも楽チン。底が窪んでくの字型になっているため薪がこぼれ落ちることも少なく、スリットが空気の通り道をしっかり確保しているので薪もよく燃えてくれる。

「あれだけ決めかねていたのが嘘のようでしたね。やっと落ち着きました」。
どれだけ頼りにしているかは、歴戦の使用感からも容易に想像がつく。
 
村田さん曰く、「ギアは、高価だから、便利だからといってもそれがベストとは限らない」。
安くても、使いにくくても、そこに可愛げがあり、使うほどに味を増すようなら使い続けてしまうものだという。そう、山ギアには、一般的なものさしでは測れない魅力があるのだ。「ギアは深いなぁ」としみじみ語る村田さんの言葉に、我々も大いに賛同した次第。
「こだわりキャンパーの愛用ギア」とは……
全国的に沸騰中のキャンプ熱。その魅力は開放的な大自然と、「ギア」に見出す男のロマン。今もっとも気になる、“あのこだわりキャンパー”たちの愛用ギアを特別に拝見。上に戻る
菊地 亮=取材・文

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