遡ること41年前。日本で初めてのエルメスのショップが、東京・丸の内に誕生した。
地域とのつながりを大切にするメゾンは、“日本らしいエルメスのショップ”として丸の内店を大切にし、2004年には現在の場所に移転。2度目の歴史を歩み始める。
そして先日、同店がリニューアル。
オレンジのファサードは黒くなり、いわば3度目の歩みを始めた丸の内店は「隠れ家」をコンセプトに生まれ変わったのだが、その中身が、日本への愛が詰まっていて感激ものなのである。実際に店内を歩いて見つけた、リスペクトの数々を紹介しよう。
① オマージュしたのは皇居の緑
まずエントランスをくぐると足元に広がるモザイクタイル。お馴染みのイニシャルも刻まれているが、ここに採用されたモスグリーンは、皇居や丸の内界隈の緑をイメージしたんだとか。
② テーブルの天板は朝ドラでも有名な……
2フロアの店内に点在するラウンドテーブル。ウッドの台座の上にある天板はなんと、信楽焼によるもの。
3月まで放送されていたNHKの朝ドラ「スカーレット」の舞台だった滋賀県信楽で焼かれた陶器は、深い蒼色が美しい。
③ 見上げれば杉本博司
丸の内店には至る所にアートが飾られているが、本当にさりげなく、ファッションアクセサリー・コーナーの上に芸術家・杉本博司さんの海の作品が! ちなみにこれらのアート作品は、本国フランスのエルメス財団でセレクトされたもの。
④ 床を見ればバンブー
ウェアが並ぶ2階はフローリング。明るいベージュのモダンな空間なのだが、実はフローリングには竹が使われている。
めちゃくちゃセンスの良い和洋折衷である。
⑤ ガラスで和紙を挟むって?
この2階でパーテーションの役割を果たしているマーブル状のガラス。ペイントしてあるのかな?と思ったらなんと、染めた手漉き和紙をガラスで挟んだもの。
確かに、よーく見るとランダムなタッチや滲み具合が絶妙で、光を透過させることで穏やかな雰囲気を醸している。もちろん、日本の職人の技術である。
⑥ フロアをつなげる左官の技術
1階と2階をつなぐ階段の壁は、禅寺の庭園をイメージした土壁。左官職人が施したものである。
⑦ ジュエリーを囲む“西陣ブドウ”
女性のジュエリーやメンズの時計をディスプレイするコーナーは、ブドウを表現した西陣織りのファブリック仕上げ。
これまたさりげないけど、見ると感動する品の良さ。
といった感じで、日本の伝統技術へのリスペクトが存分に詰まった新星・エルメス丸の内店。日本人であることを誇らしく思わせてくれるこちらは、いい大人こそ満喫できるに違いない。
最後に。冒頭で、エルメスは「地域とのつながりを大切にする」と書いたけど、このリニューアルオープンとなった8月8日には、付近を歩く人々に、馬車で花を届けるというサプライズも用意。
配られたのはガーベラで、花言葉には「希望」という意味もある。エルメス丸の内店の新たな門出、その歩みの先には、明るい未来が待っている。
そんなことを思わせるひと幕だった。
[店舗詳細]
エルメス丸の内店住所:東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル1階電話番号:03-3213-8041営業:11:00〜19:00 無休