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別荘地ではない、地域とつながる選択肢

ここに来ると子供たちは必ず「帰りたくない」と言うそう。家のなかを走り回り、外に出れば山と川もある。大きく成長したとき、どのような記憶が刻まれていくのだろう。
もうひとつ、この場所を気に入っている理由が別荘地ではないことだ。
「すぐそばに地元の人たちの生活があります。逗子からおいしい干物をお土産に持っていくと、お返しに野菜やお惣菜を持ってきてくれたり、地域とのつながりが持てるのがいいなと思っています」。
地価が高くなりそうな別荘地を選ばなければ、土地代は安くできる。メンテナンスには自分で気を使う必要があるけれど管理費もかからない。さらに井上さんは建築費を抑えるアイデアも教えてくれた。
風景を取り込む大きな窓から季節の移ろいを肌で感じることができる。
風景を取り込む大きな窓から季節の移ろいを肌で感じることができる。「このあたりは緑に溢れた夏もいいし、12月頭に訪れると紅葉の季節もいい。冬の空も、とてもきれいです」。
「近くに温泉があれば、その環境を取り込んで家はシャワーだけでもいいと思うんです。セカンドハウスまで来てごはん作りに明け暮れたくないと思ったら、いっそのことキッチンさえなくしてしまってもいいかもしれません。そこで過ごす目的がはっきりしていれば、削ぎ落とせるものがきっとあります」。
丹沢の家を手にして本格的に始まった多拠点暮らし。そこから生まれる新しい暮らし方を提案できるのも、建築家としての自分の仕事だと思っている。
HOUSE DATA
竣工:2018年 構造・規模:鉄骨造・地上2階
敷地面積:395.71㎡(119.91坪)
建築面積:139.9㎡(42.32坪)
設計:GEN INOUE  https://architect.bz
間取り:光の量やしつらいが違う7つの長方体のスペースが、7つの棟のように並んだつくり。いずれの棟も北と南に大きな窓があり、各々の間は壁で仕切られながら、開口部から見通せ、互いの空間の気配を感じることができる。
柏田テツヲ(KiKi inc.)、PAK OK SUN(CUBE)=写真 前中葉子、宮原友紀=文 小山内 隆=編集・文


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