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家族時間が増えても仕事時間は減らない

壁には、7つの棟を貫くように大きさや位置が異なる開口部が設けられている。隣の複数の棟の様子が垣間見られるよう、視覚的な計算がされている。
壁には、7つの棟を貫くように大きさや位置が異なる開口部が設けられている。隣の複数の棟の様子が垣間見られるよう、視覚的な計算がされている。
これまでずっと、平日は忙しく仕事をし、週末に家族の時間を楽しむ、おそらく多くの人と変わらないオンとオフを分けた生活を送ってきた。
「ここ数年、そのどちらも日常という感覚を持ちたいと思うようになりました。人生をトータルで考えたとき、日常がいかに充実しているか、家族との時間を持てるかが大切なんじゃないかと。だから多拠点を使ってうまく暮らしたいと思ったし、ここで働けばいいんじゃないか、トライしてみようと」。
そんなことを考えていたとき、新型コロナによる自粛生活が訪れた。子供たちが休校になったこともあり、思い切って考えていた「職住一体」の暮らしをしてみることにした。
各棟を自由に行き来し、走り回る子供たち。この家のすべてが遊び場だ。
各棟を自由に行き来し、走り回る子供たち。この家のすべてが遊び場だ。
「今までは家族との時間を増やすと仕事の時間が減るイメージでしたが、違うと気付きました。テラスでみんなで昼食を食べていても、自分が頭を切り替えるだけで、仕事の時間はいくらでもつくり出せる。
ここ丹沢の家ではメールの返信など、『しなくてはいけないこと』をいったん置き、考える時間を増やしたり、普段読めない本を読むようにしています。すると、仕事全体を見渡したときに、できることが増えるんです。
こうして1日の時間を自分でコントロールし、1日、1年をデザインしていきたいですね。そして働き方のひとつとして提案していきたいとも思っています」。
屋外とつながっているようなダイニングキッチン。大きな引き戸を開ければ、外のテラスと一体化する。
屋外とつながっているようなダイニングキッチン。大きな引き戸を開ければ、外のテラスと一体化する。
次にクリアすべきは事務所のスタッフの働き方だ。「彼らを巻き込まないと、平日を変えるには限界がある」と感じていた。そこで、この家で2人のスタッフと仕事をすることにもトライした。
「僕の仕事はイメージやコンセプトを考えたり、スタッフの描いた図面に赤入れをすること。タブレット1台あればできるのですが、図面を描くスタッフは膨大な資料や材料サンプルが手元にないといけない。なかなか難しく、これからの課題でもあります」と、今はオンライン会議を取り入れながら模索を続けている。


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