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変わる働き方と、変わらない働き方

北海道出身の画家、坂本直之が描いたカナダのコロンビア氷原とアサバスカ山。
北海道出身の画家、坂本直之が描いたカナダのコロンビア氷原とアサバスカ山。
「名古屋に戻った大きな理由は東日本大震災です。働き方、生き方を改めて考えさせられた出来事でした。東京で十分に経験を積み、自分がやりたいことで食っていく自信がつき始めた時期でもありました」。
店を構えて8年。個性溢れるアンティークショップとして地歩を固め、着実にファンを増やしてきた。今回のコロナ禍は、仕事にどんな影響があったのか。
「2カ月近く休業しました。協力金が給付されましたが、その間は無収入でしたから正直厳しかった。実はちょうど、店の移転を決めたところなんです。
今の場所は名古屋のど真ん中なので、家賃も高い。このまま新型コロナウィルスの影響が続くのであれば、高い賃料を払って続けるのは現実的ではありません。
昨日も檀さんと話していたのですが、今回のコロナ禍で地方に移住する人が増えるだろうと。また地方にいてもできる仕事へと、働き方も変わるだろうと」。
リビングの一角を占めるタイイング(フライを巻く)スペース。
リビングの一角を占めるタイイング(フライを巻く)スペース。マテリアルやリールなど釣り関係の道具は机の近くの収納スペースに。そのほかのスペースには民藝系のさまざまなオブジェが飾られている。なかでも目を引くのが、柴崎重行の作となる左上の木彫りのクマ。熱心なコレクターたちが愛してやまない逸品である。これらがすべてショップ、コンパスにこの先並ぶ可能性もあるのだ。
杉戸さんもまた、この先、アンティークショップ経営以外の仕事に就く可能性はあるのだろうか。
「いや、ショップをオープンして以来、一度も辞めることを考えたことはありません。どういう形になるかはわかりませんが、なんとしてでも店は続けます。この件に関してはなぜか自信があるんですよね(笑)」。
自分の本当にやりたいことを信じて働き、森の家で遊ぶ。杉戸さんのライフスタイルはこの先も変わらず、さらに時間を重ねて円熟味を増していくのだろう。
HOUSE DATA
竣工:2001年 構造・規模:木造高床式地上2階
敷地面積: 1036㎡(313坪)
建築面積:151.3㎡(45.6坪)
設計:ライフアンドシェルター www.lifeandshelter.org
間取り:オリジナル調合の甘い焦げ茶色に染色された杉板で作られた外壁が特徴。1階は玄関と倉庫を中心に構成。高床式の2階にリビングルーム、ベッドルーム、キッチン、浴室。シンプルで広々とした贅沢な間取りだ。
柏田テツヲ(KiKi inc.)、PAK OK SUN(CUBE)=写真 前中葉子、宮原友紀=文 小山内 隆=編集・文


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