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2020.08.01

からだ

現役医師が暴く「ビール=プリン体=痛風」という迷信のカラクリ

カラダのメンテナン酒●気持ちイイ酔いに身を委ねる。やはり酒は人生を豊かにしてくれる……なんて思いつつ、頭の片隅にいつもチラつく「健康」の2文字。心もカラダも潤す、正しい“メンテナン酒”論。
「ビールばかり飲んでると痛風になっちゃうよ」……ビール党であれば、誰しも一度はそう言われた経験があるだろう。
「風が吹くだけでカラダが痛む」とされる痛風。考えただけで苦虫を、いや、苦すぎるホップを噛み潰したような顔になってしまうが、一般的に、痛風の原因は“プリン体”にあり、ビールこそ諸悪の根源だと考えている人も多い。

しかし、書籍『「健康」から生活をまもる』(生活の医療社)を出版した現役医師の大脇幸志郎先生は、それらを“迷信”だと断言する。
「プリン体を気にしてビールを我慢したり、好きな銘柄を避けることに意味はありません」。
な、なんてこった。もちろん事実ならありがたいのだが……一体どういうこと?

話を聞いたのは……

大脇幸志郎●1983年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。出版社勤務、医療情報サイト運営ののち医師。著書に『「健康」から生活をまもる 最新医学と12の迷信』。翻訳にペトル・シュクラバーネク『健康禍 人間的医学の終焉と強制的健康主義の台頭』(ともに生活の医療社)。

「ビール=プリン体=痛風」という“迷信”の正体

少しでも健康に気を遣おうと、普通のビールは避け、プリン体ゼロや糖質オフの製品に手を伸ばす。そんな日々を送っていた健気なビール党は、大脇先生の証言にさぞ衝撃を受けたに違いない。
「重量あたりのプリン体の量で計算すると、ビールよりも、肉や魚のほうが10〜100倍は多いんです。でも、ちりめんじゃこを毎日食べている人に『健康的だね』と言うことはあっても 『痛風になるよ』と注意しませんよね。大抵の人は、ビールの何倍ものプリン体を毎日、食事で摂取しているんです」。
「魚卵もプリン体が多い」というのは有名な話だが、実は魚や肉と比較すれば低め。
プリン体は体内で分解されたあと、尿酸となって腎臓と腸管から排出される。そして、尿酸の値が高いと痛風の原因になるとされている。
これ自体は間違いではないが、実際には尿酸値が低くても痛風になることはあるし、そもそもプリン体は体内でも大量に生成されているという。しかもビールのプリン体は肉や魚の10〜100分の1でしかなく、それは生活に影響を与えるレベルに満たないというのだ。
「毎日ビールを1リットル以上飲み続けて、ようやく肉や魚と同じプリン体量に匹敵する程度です。その場合、プリン体よりもまずはアルコール中毒を心配したほうがいい。食事全体のうちビールから摂取するプリン体の量はごくわずかなんですよ」。
となると、長年誤解されてきた「ビール=プリン体=痛風」の図式は崩壊する。それこそビール瓶の底が抜けたかのように。


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