■ホンダ「エレメント」
絶版後に見出された帰国子女
ホンダが2002年に北米で発表した、これまでにない斬新なSUVが「エレメント」だ。北米市場を意識して開発されたモデルで、デザインも生産も北米で行われたモデルで、翌2003年に日本にも輸入され、ホンダベルノ店で販売された。
ライフガードステーション(海岸にあるライフガードの見張り台)をモチーフに若年層をターゲットとしたSUVで、その最大の特徴は左右のドアが両側観音開きになることだ。
フロントドアとリアドアを開けると現れる、ピラーのない広大な出入り口と、10フィートのロングボードを積むことを想定して防水仕様になっている床は、ウェットスーツやスキーウェアを着てギアを抱えたままで乗り込みやすい。
また後席を跳ね上げたときの空間はとても広く、サーフボードはもちろんMTBのような背の高い荷物を積むことも可能だ。バックドアは上下2分割で開けるタイプで、ちょっとした荷物なら上のドアを開けるだけで積み下ろしができる。
フェンダーなどに樹脂製の無塗装パーツが使われたデザインも個性的だったが、その特徴が日本ではあまり理解されず、日本では2005年に、わずか2年半ちょっとで姿を消してしまった。一方アメリカでは一定の人気を得て、2011年まで販売されていた。
ところが5年ほど前からサーファーやアパレル関係者など感度の高い人たちが注目するようになり、今日本でも静かなブームに。あまりにも早く登場しすぎたがゆえに時代の中で置き去りにされてしまった名車だ。
「SUV大国ニッポン」とは……武骨で大型。輸入車のイメージが先行することも多いSUVだが、実は日本はSUV大国と言っても過言ではないほど、国産メーカーのSUVが充実している。日本の日本による、日本のためのSUV。集まれ!
上に戻る 高橋 満=文