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「レンジローバー」の登場当初は、このようにとてもシンプルなインテリアだった。約25年という長い生産年数の間に、次第に豪華になりプレステージカーへと進化していく
こうして1970年に登場したのが初代「レンジローバー」だ。
今も多くの人を魅了し続けるスッキリとしたスタイルは、デザイナーの仕事というより、実はエンジニアの思想が素直に現れたものだった。例えば4ドアではなく、2ドアとしたのはオフロードを走る車ゆえ、ボディ剛性を確保したかった(開口部が少ないほど剛性を保てる)からだという。
またソファではなくイスに座る姿勢となるレンジローバー独特の着座姿勢「コマンドポジション」と、天地方向に大きいサイドウインドウは、ドライバーが上から前方と左右を見渡しやすいようにするため。これらは開発リーダーの中心エンジニア、スペン・キングのアイデアだ。
もちろん当時としては類い希な4WDシステムや、乗用車のような乗り心地を実現する足回りなど、「レンジローバー」の随所には彼らエンジニアのアイデアがたっぷりと詰め込まれた。
シンプル・イズ・ベスト。それがスペン・キングの考え方だという。
フェンダーミラーがドアミラーになったのは1977年。また車高を調整できるエアサスペンションを備えたのは1992年から。
そう言われてみると、歴史のあるイギリスのファッションブランドも、どこか同じ思想がうかがえる。もちろんすべてのブランドで言えることではないが、マーケティングに左右されず、技術的な考えをシンプルに表現したことで、「レンジローバー」は生まれたのだ。
その色褪せない価値は今もなお愛好家の多いことにも表れており、少なくともバブアーとこの「レンジローバー」は、ともにロイヤルワラント(イギリス王室御用達)の栄誉を授かっている。
「人気SUVの初代の魅惑」とは……
今はまさにSUV興隆の時。戦後、軍用車をベースに開発した車をルーツに持つSUVは多種多様な進化を遂げ、今や世界中で愛されている。そして、どのSUVにも当然、初代がある。そこには当代が持たない不動の魅力があり、根強いファンがいる。彼らを夢中にさせる“人気SUVの初代の魅惑”を探ろう。上に戻る
籠島康弘=文


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