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本当に大切なことは言葉にしない

それでは、女性活躍に対する「本当の障害」とは何でしょうか。私は、それは日本人のハイコンテクスト文化(文化の共通基盤が多い)と、それに従った非言語的コミュニケーションだと思います。
エドワード.T.ホールやエリン・メイヤーなどの研究を見ると、日本はハイコンテクストの極にある国で、言語に依存せず「あうんの呼吸」「以心伝心」「空気を読む」などのコミュニケーションで相手にものを伝えるとされています。直接的表現よりも曖昧な表現を好み、言語量も少なく、仮定と結論までの間の論理を丁寧に語りません。
この国民性と、一度男性優位で固まった戦後社会が結びついて、それが女性にとって「本当に大切なこと」を知る機会を奪い、能力の発揮を阻害しているのではないでしょうか。
 

ローコンテクスト化が女性を活かす

飲みニケーションが減り、タバコ部屋が無くなり、さらにはテレワークが進展することで、日本のビジネス社会は徐々にローコンテクスト化していく土壌になってきています。これは、コンテクスト依存で仕事をしてきた(そして女性の進入を無意識的に排除していた)男性社会にとっては面倒なことかもしれませんが、女性にとってはチャンスだと思います。
働き方の変化がローコンテクスト化を促進することで、コミュニケーションは直接的・明示的・論理的・言語的になり、特殊なコミュニティにいることでコンテクストを共有せずとも、大事な情報に触れることができます。
上司が女性を活躍させるためには、コンテクスト依存のコミュニケーションをやめて、言語依存のコミュニケーションを取ることは本質的な解決策ではないでしょうか。
 
連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ
「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
石井あかね=イラスト


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