そんなお茶目な看板娘、身長は147cm。「179cmの兄に全部取られました」と言っていた。
「小学生の頃から整列のときは常に先頭。腰に手を当てるポーズも慣れたものです(笑)」。
「困ることですか? 電車のつり革に掴まれないし、荷物を網棚に乗せることもできません。このお店で働くことが決まった際に脚立を買ってもらいました」。
外を行き交う人々が傘をさし始めた。雨が降り出したようだ。こういうとき、オープンエアーの酒場は非常によい。
大学卒業後に就いたのはジュエリー販売の仕事。客層は50代、60代のマダムが中心で、孫のようにかわいがってもらったそうだ。
「なぜか、手作りのおにぎりをくれるおばあちゃんもいました。そのあとでアプリゲーム会社の人事に転職したんですが、私はやっぱり接客業が向いているなあと」。
そんなわけで、縁あって四谷の看板娘になった小百合さん。オーナーの玉川幸男さん(44歳)は彼女をこう評価する。
「仕事ができるし、お客さんの受けもいいですね。なんだかんだ言って、僕より周りが見えているかもしれません」。
こっそりと聞いた酒癖もキュートなものだった。
「居酒屋でもここでも、酔うと椅子から降りてしゃがみます。気を遣って横にしようとすると怒られる(笑)。その体勢がいちばん落ち着くんだそうです」。
そんな小百合さんが最近ハマっていたものは四ツ谷駅構内のガチャガチャ。
「『シャクレルプラネット』っていうシリーズがあって、酔った勢いで買ったのをきっかけに集め始めました」。
いろんな動物がいるが、ポイントはみんなアゴがしゃくれているところ。
お客さんの協力もあってコンプリートできたため、ブームはひと段落したそうだ。
なお、「ムール貝のヒューガルデン蒸し」は出汁が効いたスープも飲み干したい。そう伝えると、小百合さんは温めたうえに洒落た器で持ってきてくれた。
めくるめくベルギービールの世界と看板娘の愛され具合を堪能した。最後に読者へのメッセージをお願いします。
【取材協力】YOTSUYA BREWERY住所:東京都新宿区四谷1-8 中川ビル1F電話番号:03-3353-1009https://yotsuya-brewery.gorp.jp 「看板娘という名の愉悦」とは……好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文