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ただ目の前のことに取り組むなかで見つけた自分の居場所

そして、入社3年目の2019年からは、現場付き広報というポジションに就任した。
矢貫俊之さん
「実は広報ってやりたくなかったんですよね。会社の中にいて、球団リリースとか、外に発信することをチェックする部署だと思っていたので、自分のアイデアとか意見とかが出しづらいのではないかと。あと選手時代の経験から、広報は何をしているのかっていうのがはっきり見えていなかったということもあって、いちばん行きたくない部署でした」。
そんな複雑な心境を胸に、広報部に配属された矢貫さんだが、広報として働き始め、その印象は一変したという。
「メディアの皆さんといちばん近い位置にいるので、球団として売り出したいことや、選手の強みを直接提案できるのは、強みであり楽しい部分だなと思います。直近でいうと、新型コロナウイルス禍で取材なども制限したなかで、今ジャイアンツがどんな取り組みをしているのか、選手たちはどんなことをしているのかをファンの皆さんに届けるため、いろんなことを発信することにやりがいを感じました。とはいっても、おもしろいと思えるようになったのは広報の仕事の100%のうちの2%くらい。98%はまだまだ辛いことが多いですけどね(笑)」。
矢貫俊之さん
現在、入社4年目。球団の中の人としてのキャリアを重ねていくうちに、徐々に自分の立ち位置を見出せるようになってきた。
「選手と会社が目指す場所は一緒でも、言葉ひとつで頓挫してしまうこともある。でも、その感覚って、選手なら選手にしかわからないし、会社なら会社にしかわからないと思います。でも、僕はどちらの立場も経験していますから。できるだけ両者の意見を聞きながら、お互いにとって負担が少ない形になるように潤滑油になることができればいいなと思っています」。
矢貫俊之さん
「自分の経験から、選手にはできるだけ野球に集中してほしいんですよ。ただ、球団としてはメディアへの露出も大切です。だから、選手たちにとっていちばん負担にならないところは聞くようにしていますね。自然体でいる状態の延長線上に取材があるという環境、つまり選手が精神的な負担を感じずに野球に集中できる広報環境作りというのは常に心がけていきたいです」。
だからこそ、選手とのコミュニケーションが仕事としての頼みごとだけにはならないように、出番を控える選手とのキャッチボールや外国人選手とのコミュニケーションは率先して行っている。
これは広報活動でもなんでもない。しかし、手伝うことができるのに、広報だからと見て見ぬ振りをするのは逆に不自然だと話してくれた。
名前
その一方、あくまでも球団職員である立場は忘れない。現場が続いても、会社のオフィスにはできるだけ出勤するようにしている。また、選手たちの手伝いをしているときも、広報の三種の神器であるメモ、ペン、スケジュール管理用の携帯は肌身離さず持ち歩いている。
球団と選手、立場は違えどひとつのチームであることには変わりがない。だからこそ、選手も職員も笑顔で溢れていた2019シーズンの優勝は「楽しくて仕方なかった、やっていて良かったなと思いました」と笑って話してくれた。


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