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(写真提供:村上裕一)
「空間的想像」で入念に対戦映像を分析すると、攻撃の軌道や回避の癖など、外から観ているだけではわからない相手の細かな動きが、だんだん具体的に見えてきます。
「弱い」人は相手を分析しようとしても、ただ映像を漫然と見てしまうことが多い。自分ならどうするか、自分の視界からはどう見えるか。それをつねにシミュレーションすることで、臨機応変に対応できる「強さ」が生まれるのです。
 

目的意識が曖昧だと、準備や練習も非効率的に

これは、格闘技に限らず、多くの物事に共通する問題でしょう。
多忙なビジネスパーソンならみなさん同じ境遇だと思いますが、僕も試合や練習だけに時間を使えるわけではありません。インストラクターとしての仕事や取材対応などもありますし、最近始めたYouTubeもチャンネル開設1年で登録者数100万人を超えるほどに本気で打ち込んでいます。睡眠時間も平均7時間は確保しているため、必然的に練習や準備の時間は限られます。
そうなると、「練習」は短い時間で効率的に行わなければなりません。そのためには、やはり「実戦」をつねに想定することが大切なのです。
僕は2時間の練習時間をどれだけ有効に使うかを考えた結果、「総合格闘技の試合で勝利することに直接結びつかない練習」はしないことにしています。具体的には、ウェイトトレーニングやランニングなどは行わず、ひたすら実戦形式のスパーリングや、レスリングなどの新しい技の習得に時間を割いています。
基礎練習は大事、と思う方もいるかもしれませんが、実際の勝利に貢献しているとは限りません。ウェイトトレーニングやランニングで身体に負荷をかけて「練習をした気になった」としても、試合で勝てなければ無意味なんです。
これは社会人と英語力の関係に似ているかもしれません。「これからの時代英語は基礎教養」とずっと言われていますが、具体的に使う機会がなければ成果が出にくいでしょう。また日本人は、テストの点数はよく取れるのに会話はぜんぜんできないという状況になりがちです。趣味ならそれでもいいでしょうが、忙しいビジネスパーソンがそんな悠長な態度ではいられないですよね。
結局、何かを達成したいとか、何かを克服したいというような、明確な目的意識が大切なんです。目的さえはっきりすれば、自動的にやるべきことも明確になりますから、コミットすることができます。そして、コミットしているからこそ、短時間でも集中して質の高い準備ができるんです。
『強者の流儀』(KADOKAWA)
『強者の流儀』(KADOKAWA)
逆に言うと、目的意識が曖昧なのは「弱さ」です。やっていることに自信がないため、練習メニューもちゃらんぽらんになりがち。そうすると質も効率も落ち、成果が出ないから心身ともに疲弊してしまいます。こういう状態に心当たりはありませんか?
目的意識をしっかり持つために大切なのは、今取り組んでいることが本当にやりたいことなのかどうかの再確認です。結局、本当にやりたいことでなければ全力をぶつけることはできないでしょう。
そして、取り組んでいることが本当にやりたいことであれば、どんどん成長することができます。やりたいことではないのになんとなくやめることができず、ずるずると続けてしまう、というのも「弱さ」の表れです。もちろん、疲弊したときはしっかり休息をとって、モチベーションを回復させましょう。
心身ともに余裕を持ち、本当にやりたいという意欲を持って物事に取り組むこと。それができれば、「弱者」は自然と、「強者」に生まれ変わっているはずです。
 
朝倉 未来:総合格闘家、YouTuber
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記事提供:東洋経済ONLINE


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